学校敷地に謎物体 金属製ツクシの正体は? 位置測定の電子基準点

2023.03.27
地域

和田中学校のプール横にある「電子基準点」。閉校後の扱いについては国土地理院で協議中という=2023年3月8日午前8時41分、兵庫県丹波市山南町和田で

丹波新聞社では住民のさまざまな疑問を調べて解決する「調べてくり探(たん)」を展開しています。今回は、兵庫県丹波市在住の方からの依頼。「今月で閉校となる同市立和田中学校のプールの横に、ツクシのような形をした金属製の大きなモニュメントのようなものがあります。一体、何なのでしょうか」ー。

同校の岸田孝広校長を訪ねると、「ああ、ありますよ。『電子基準点』ですね」と案内してくれた。「数年前に『電波が飛んでいない』と国土地理院から連絡があり、それで存在を知った」とのこと。

太陽光を反射してすっくと立つ「電子基準点」。正面の真ん中辺りに「基本 電子基準点(GPS観測局)NO.950345 建設省国土地理院」とあり、連絡先の電話番号も書いてある。早速、かけてみると、国土地理院測地観測センター電子基準点課の川元智司課長が応対してくれた。

「電子基準点は1993年から96年頃にかけて全国に設置され、1318カ所あります」とのこと。和田中のものは96年の3月14日に建てられたという。詳しい資料もメールで送ってくれた。

電子基準点とは、全球測位衛星システム「GNSS」の観測点を指す。アメリカのGPS、日本の準天頂衛星システム「みちびき」をはじめ、ロシアやEUの測位衛星電波を受信し、その場所の「位置」をほぼリアルタイムで正確に測っている。

電子基準点の内部構造(国土地理院ホームページより)

多くは、高さ約5メートルのステンレス製の柱の形をしており、上部にGNSS衛星からの電波を受信するアンテナ、内部に受信機や通信用の機器などが格納されている。

ちなみに、兵庫県には33カ所、丹波市には和田中とグリーンベル青垣の2カ所、となりの丹波篠山市には西紀小学校の1カ所にあるそうだ。おおむね20キロ間隔で公共施設の敷地などに設置されているという。

かつて、土地の測量は、石でつくられた三角点を基準に行っていたが、現在は電子基準点の観測データも活用し、より効率的に測量できるようになった。

また、電子基準点は防災面でも重要な仕事を担っている。日本はプレートの境界にあり、地震や火山活動が活発。少しずつ動いている地面の位置を、電子基準点で毎秒測ることで、地殻変動を絶えず監視している。文科省の地震本部をはじめ、地震関係の研究の基礎資料に使われている。

電子基準点のデータは、インターネットを通じて民間提供されており、最近は、建設や農業の分野でも活用が広がっているそう。ICT搭載の機械が登場し、自動運転により、作業の正確性向上や人手不足対策にも期待されているという。

宇宙空間とつながり、目に見えない電波の世界で大活躍の電子基準点だが、設置された当時は〝誤解〟を受けることもあったようだ。一般にあまり知られていないため、「怪しい電波を出しているのでは」といった問い合わせが国土地理院に寄せられたとか。今でも時々「あれは何」と尋ねる電話があるという。

「学校や公共施設に多く建てられているのは、教育の現場からも意義を発信してほしいという目的もある」と川元課長。「電子基準点は、国土の正確な位置を知るための重要なインフラ。もし見かけたら、大事に扱っていただけるとうれしい」と話している。

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