人さえいれば村は明るく
丹波篠山市の最東部に位置し、人口約50人の市野々集落で、かかしを通じた地域おこし活動を展開する「市野々かかしの里づくりプロジェクト」の代表。昨年、集落で約20年ぶりに赤ちゃんが生まれるなど、活気が満ち始めている。「まだゴールではないが、今までの活動が実を結びつつある」と話す。
生まれも育ちも市野々。旧多紀町、旧篠山町、篠山市の職員として58歳まで勤めた。退職後、同市観光協会の事務局長を務めた。
過疎化が進む市野々で暮らす中、「静かな農山村の魅力を発信したい」と、挑戦心が芽生えた。
そんな頃、「奥播磨かかしの里」として知られる姫路市安富町関地区を訪れた。「これは面白い」。後日、住民たちに伝えると、「面白い」と共感を得た。
外部から人を呼び込もうと、住民有志が中心となり、2015年からかかしの製作をスタート。以来、丹波篠山市で毎年3月に開かれる「ひなまつり」に合わせ、個性豊かなかかしを製作。現在は約60体が、人のように集落内に立ち並ぶ。車や自転車を止め、興味津々に見て歩く人も増えた。
「営農組合を設立したり、ふき作りに励んだりと、住民がみんなで何かに一緒に取り組める土壌が昔からある。かかしはあくまで、コミュニティーを形成するための仕掛け」と語る。
一昨年、昨年と続けて20―30歳代の男女2組が市野々へ移住。「僕らの元気の源になっており、地域に新しい風を吹き込んでくれている」とほほ笑む。「人さえいれば、村は明るくなるし、美しくなる。受け皿を整え、移住者を一人でも増やしたい」。72歳。