病室にWi-Fiない? 電波干渉や安全性への誤解 コロナ面会制限受け普及進む

2023.10.28
地域注目

兵庫県立丹波医療センターのWi―Fiがつながる部屋で、パソコンで友人との交流を楽しむ入院患者=兵庫県丹波市氷上町石生で

丹波新聞社では住民のさまざまな疑問を調べて解決する「調べてくり探(たん)」を展開しています。今回は、兵庫県丹波市在住の70歳代男性からの依頼。「県立丹波医療センターに入院しています。個室にいたときは病院の無料Wi―Fi(無線LAN)に接続ができたのに、大部屋にはありません。スマートフォンを持っておらず、外部とのやりとりはパソコン。ネットにつなげず、外部と遮断されるのはつらい。コロナ禍の面会制限で誰とも会えず、気が滅入る。何とかならないのでしょうか」―。

同病院に照会し、細見和正管理局長から「今年度中に整備する」と回答を得た。入院病棟だけでなく、全館で計画中という。

14の県立病院を所管する県病院局は、同病院を含む7病院分2・49億円の整備費を確保した。県民からの要望が強いこと、新型コロナの面会制限で患者が孤独を感じること、導入済みの公立病院が出てきていること、などが理由。

同病院の現状は、一部病室に無料Wi―Fiがある。ない病室も使用を禁じておらず、ネット環境が欲しい人はモバイルルーターを調達し、自身で環境を整えている。同病院は2019年の新築。一部とはいえ病室にWi―Fiがあるのは、県立病院の中では「整備が早かった方」(病院局)という。1階ロビーは、県の公衆無線LAN「Hyogo Free Wi―Fi」がある。

近隣市の自治体病院では、市立西脇、福知山市民、三田市民のいずれも病室になく、個人調達。北播磨総合はある。

そもそもなぜこれまで整備されてこなかったのか。県病院局は、電子カルテなど、院内医療用のネットワークを優先し、患者サービスにまで踏み込まなかったという。

この状況は県立病院に限ったことでない。コロナ禍の入院患者の孤独を救うために、「1つでも多くの病院の病室に無料Wi―Fiを」を掲げ、2021年に発足した任意団体「病室Wi―Fi協議会」が同年、県立丹波を含む全国のがん診療連携拠点病院や国立病院機構など563医療機関を対象に取ったアンケート(回答率100%)で、全病室で無料Wi―Fiが使える病院は2割にとどまった。県内は、神戸大医学部附属、神戸市立中央市民など4病院だった。

自身がコロナ禍にがんで長期入院し、面会もできずに強い孤独を味わった体験から同協議会を立ち上げたフリーアナウンサーの笠井信輔さんは、全国的に整備が進まない理由を「Wi―Fiの方が、PHSより医療機器に与える電波障害が小さいことが知られていない。Wi―Fiの電波が医療機器や医療情報システムに干渉し、トラブルを起こすという誤解。セキュリティー上の問題を生じさせかねないという誤った思い込み。幹部や事務方のIT理解度の低さが根底にある」と指摘する。

費用面や、院内ネットワークのメンテナンスを担う業者が、業務が増えるのを嫌う、なども阻害理由。

とはいえ、新型コロナでオンライン面会などが進んだことで、普及は進んでいる。

医療機関の電波トラブルを防ぐため、医療機関の電波の利用・管理状況をまとめている電波環境協議会「医療機関における電波利用推進委員会」が6月に公表した最新の調査結果によると、患者用Wi―Fiを整備している病院の割合は前年から8・2ポイント増え、41・7%(院内にスタッフ用Wi―Fiを導入していると答えた830病院中)。

笠井さんは、「ここ3年で顕著に整備が進んだ。この流れをさらに加速させることが必要だ」と話している。

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