国の文化審議会は11月24日、国登録有形文化財の登録を文部科学大臣に答申し、兵庫県丹波篠山市からは、篠山小学校(北新町)の木造2階建ての校舎5棟と、鉄骨造平屋建ての講堂1棟の計6棟が登録されることになった。同市内では7カ所目(41件)の登録。
現在の同校は、1910年(明治43)に同城跡三の丸に竣工して以来、増改築を繰り返してきたそれまでの校舎を、戦後の52―55年(昭和27―30)の間に順次解体し、建設したもの。講堂は戦前の35年(昭和10)に建てられた。
校舎1―5号棟は切妻造りの瓦ぶき屋根で、東西を軸にほぼ平行に並んでいる。北側に廊下を、南側に教室を配置し、南北に通した渡り廊下などが、戦後復興期の学校建築として創意が現れていると評価された。
講堂は、外壁の腰部分に、くし引きで浅い溝を作って焼成した粘土タイルが貼られ、内部の鉄骨による骨組み構造の特徴からも戦前期の希少な造りの建物であるとした。
最盛期の56年には、1230人の児童が在籍したが、現在は132人となり、空き教室を活用して篠山幼稚園が併設されている。
同校は、国史跡の篠山城跡内に立つ全国でも珍しい城の中の学校。一時は史跡保護の観点や耐震性の問題から移転改築が検討された時期もあったが、存続を願う地域住民の強い声を受け、2013―14年に耐震補強改修工事を行うなどして保存が実現した。
同校の押部匡子校長は、「子どもたちの日常は校舎の中にある。その日常の中に歴史と伝統が普通に入り込んでいるのが篠山小の素敵なところ。歴史と伝統の下支えの中で、地域と一緒になって子どもたちの教育を進めている。学校が文化財となったことは感慨深く、子どもたちや保護者、地域の皆さんと喜び合いたい」と話している。
国の登録文化財制度は、築後50年を経過している建造物で、▽国土の歴史的景観に寄与している▽造形の規範となっている▽再現することが容易でない―のいずれかに当てはまるものが対象となる。全国では今回、290件が登録され、累計1万4035件(建造物)となった。