【笑う門には福来る】兵庫県丹波市氷上町出身の落語家、笑福亭由瓶(ゆうへい)さん(52)は関西を中心に落語会に出演し、笑いを届けている。コロナ禍でも精力的に活動を続け、上方落語の定席「天満天神繁昌亭」(大阪市)で活躍した入門25年以下の落語家に贈られる「繁昌亭大賞」の「奨励賞」も受賞。新年を迎え、笑いに対する思いやコロナ禍中に感じた”本音”、これからの目標を聞いた。
―天満天神繁昌亭で活躍した入門25年以下の落語家に贈られる「繁昌亭大賞」の「奨励賞」を受賞されましたね
今までの人生で一番のご褒美かなあ。賞なんか一生もらえないと思っていたけど。言うたら、コロナ禍の中でも活動的にやった「努力賞」。こんな賞、もう一生もらえることない気がする。丹波市が「市民栄誉賞」みたいな賞を出してくれへん限りは(笑)。
―コロナ禍を振り返って。落語会をやめなかったのはなぜでしょう
とにかく頑張って落語会をやった。70人が入る会場でも20人ぐらいに間引いて「ソーシャルディスタンス」。今となっては死語かな。
コロナになってから、噺家の中では「やるべきではない」という批判もあった。けど、僕は性格上、やりたかった。
「落語がしたい」とかは思ってなかった。ただ、嫁さんと娘に「父ちゃんは強い」と思われたかった。追い込まれているときだからこそ、人間性が出ると思う。ウイルスじゃなくて、「コロナ」に負けたくなかった。
―笑いの重要性を改めて感じたのではないでしょうか
正直に言うと、そんなことを思ってはやっていなかった(笑)。けど、「世の中が暗いから笑いを届けてほしい」「今の唯一の楽しみが落語会」と言ってくれるお客さんがすごく多かった。今までは思わなかったけど、「ええ仕事に就いている」と思えた。ええ経験したと思うね。
あと、オチじゃないけど、貯金はしとかなあかんと思ったな。
―故郷・丹波への思いは
コロナの時に攻撃的にやれたのは丹波出身だったからというところもあるんちゃうかな。ヘルメットをかぶって片道40分かけて学校に通っていた。「都会で電車通学してたやつに負けるか」って。もう、えげつないかっこうつけ。
―師匠の鶴瓶さんはどんな存在ですか
会社勤めじゃない自分にとって、貴重な怒ってくれる人。怖いけど、両親が亡くなっている自分が甘えられる存在。目標なんて、もうよう言わん。なられへん。
―これからの目標、夢を教えてください
全国47都道府県の独演会制覇。今は実質…兵庫と大阪の2つかな(笑)。あとはせっかく大阪に来て落語家にならしてもろたんやから、古里の丹波で3カ月に1回、50人のお客さんでも良いから、落語会をやっていけたら。
しょうふくてい・ゆうへい 本名・由良宏人。松竹芸能所属。兵庫県立柏原高校を卒業し、食品会社の営業マンとして働きながら、テレビ放送局で出待ちをし、笑福亭鶴瓶さんに弟子入りを志願。1年半、「うっとうしがられない程度に」通いつめ、1997年に晴れて入門した。天満天神繁昌亭や「神戸新開地・喜楽館」(神戸市)、地元の丹波市など関西各地で落語会に出演。古典から新作落語まで手がける。芸風は本人いわく、「良く言えばアクションが大きく、派手。悪く言えば下品」。現在、9番弟子。趣味はサウナ。