巨岩から生えた?―。兵庫県丹波市氷上町大崎の山裾に、大きな岩の間から10メートル以上の大木が育っている珍しいスポットがある。パッと見ると、岩から木がにょきにょきと樹勢を伸ばしているように見え、気付いた人を驚かせている。
生活道路沿いにあり、墓地への入り口付近。高さ2メートル×幅3メートル×奥行3メートルほどある岩を、豊かな樹勢で割ったかのように木が空に向かって伸びており、真下から見上げると首が痛くなるほどだ。
同県立人と自然の博物館に木の写真を送り、同定を依頼すると、「葉、樹皮などの様子からエノキのように見えます」と回答があった。落葉高木だ。
2017年に同市内に移住した女性(79)は、この道路をバイクで通行した時に初めて見たという。「岩から木が生えているとしか見えず、不思議でしようがなかった。すごいものがあるんだなと思っていた」と目をぱちくりさせる。自然の偉大さに感心したと話し、「人知の及ばないところがあるからねえ」と舌を巻く。
一方で、地元にとっては慣れ親しんだ風景に溶け込んでいるようで、集落を歩いて出会った複数人に水を向けると、「そういえば、あったような…」とのこと。特別、意識する人は多くないようだ。
地元の男性(74)によると、子どもの頃から岩はあったという。木が生えていたかは記憶になく、「山から転がり落ちてきた岩が、落下の衝撃で割れてしまい、割れた隙間に種が入ったのかも」と推測する。
神秘的な姿から「神聖」と感じる人もいるといい、男性は「以前、伐採するような話が出たこともあったが、もし切ってしまって、何か良くないことが起きてしまうのが怖く、『いらわんとこか』ということで落ち着いている」と語る。
「しかし、まあ…」と腕を組む男性。「しげしげと見つめてみると、木のこぶが大きくて立派な木やなあ。神聖と思う気持ちも分かるわ」とうなずいていた。