兵庫県丹波市氷上町の映画館「ヱビスシネマ。」を営む映画監督でありながら、オートバイの世界最速記録を持つライダーでもある近兼拓史さん(62)が、今夏に米ユタ州の塩湖平原で開かれるオートバイ国際大会「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアルズ」の出場費用を、クラウドファンディングで募っている。昨夏は、台風の影響で中止となる悲運に見舞われたが、昨秋の走行テストでは非公式ながら、50㏄で自身の記録を更新する平均時速117・05キロをたたき出した。今度は正式な記録更新を目指し、「『60歳を超えてもやれる』ということを体現したい」と静かに闘志を燃やす。
専用サイト「レディーフォー」で支援を募る。目標金額は100万円で、達しなければ支援金を受け取れない方式。支援者への返礼は、現地の大会動画の視聴権や、出場する車体に個人や企業の名前を入れる権利などを用意している。
近兼さんは18年、国産車「スーパーカブ」をベースに、全国各地の金属加工企業と共同開発したマシンで初出場。翌年には6部門で世界最速記録を樹立した。20―22年は新型コロナと大雨の影響で出場できなかった。昨夏は台風の影響でコースが冠水し、渡米後に中止が決まった。成果が出せないまま、マシンの輸送費用、スタッフの渡米費など約2000万円だけがのしかかった。
帰国後、失意からなんとか再起し、秋田県のスポーツ施設でテスト走行を実施。50㏄で自身の最速記録を15キロ以上更新し、実力を示した。
夏は気温50度を超える日もあり、標高は1300メートルという過酷な環境。100キロを超えるスピードの中、前かがみの体勢を維持しなければならず、命がけの挑戦。出場には再び最低1000万円を超える費用がかさむ。
「失敗するかもしれないが、20歳ぐらいの人にも、『60の僕にできるんだから、あなたならもっとできる』と伝えたい。挑み続けることの大切さを体現したい」と力を込め、「不便な挑戦を面白がって」と協力を呼びかけている。クラウドファンディングは4月12日まで。支援は「ヱビスシネマ。」(0795・88・5910)でも受け付ける。