兵庫県丹波篠山市高屋にある「和寿園デイサービスセンター」は、デイサービス利用者の「夢」をかなえる「夢ツアー」を行っている。「動物園に行きたい」「世話になった医師にお礼を言いたい」など、利用者の夢を聞き取り、担当の介護職員が、その実現を手助けする。これまでに7人の夢が実現。今後も約80人いる利用者の夢をできるだけかなえていくという。
同センターは、デイサービスで運動することが目的になるのではなく、何かの目的のために運動を楽しんでもらうことが大切だと捉え、利用者が夢を持ち、それを励みに運動をする、というようになればとツアーを企画した。
1回目は2022年6月、男性利用者が「動物園で動物と触れ合いたい」と希望。職員が、男性の希望がかなう動物園を探し、京都府福知山市動物園でヤギやウサギなどと触れ合ったり、餌をやったりして楽しんだ。担当した職員は「(利用者は)大はしゃぎで、童心に帰られていた」と言い、手応えを感じたという。
その後、コロナ禍で中断。再開した昨年10月には、女性2人が「仲良し同士でコンサートに行きたい」と希望し、市内の城南小学校で行われた「丹波の森国際音楽祭」の「街角コンサート」を鑑賞した後、ファミリーレストランで昼食を楽しんだ。
同年11月、利用者の金子あい子さん(83)は、2019年3月に兵庫医科大学ささやま医療センター(同市黒岡)を退職した産婦人科医の池田義和さんに「会って、お礼を言いたい」との願いが実現した。金子さんが経営していた飲食店に池田さんが通っていたことや、孫2人の出産に携わってもらったことなどから、「池田先生が丹波篠山を離れられ、本当に寂しい。お人柄も良く、大変お世話になった。命の恩人」と言う。
担当の介護職員、小立香陽子副主任が現在の池田さんの勤務先、京丹後市立弥栄病院に連絡して経緯を説明、面会の約束を取り付けた。小立副主任と、同医療センター元事務員で、金子さんの運転介助員をしている北川佳子さんの3人で同病院を訪ね、金子さんは池田さんとの再会を喜び、礼を述べた。また、ひ孫の写真を見せるなどし、最後に手をしっかり握り合った。金子さんは「またお会いできると思わなかった。本当に良い企画をしていただいて感激」と感謝していた。
同年12月には女性の利用者が「正月飾りを作りたい」と、県立ささやまの森公園でミニ門松作りに挑戦し、今年1月には「ミュージカルを見たい」という女性利用者が「丹波篠山市民ミュージカル」を鑑賞。また、外食を希望し、スーパーでソフトクリームを食べたり、寿司店へ行ったりする利用者もいた。今月は、「夫と外出したい」という車いすの女性利用者の夢をかなえるため、職員が女性利用者と夫を車に乗せて、ドライブする企画も予定している。
小立副主任によると、男性は「釣りがしたい」や「会社の仲間に会いたい」など、女性は肉料理や寿司を食べたいなどの希望が多く、男女とも墓参りを希望する人も多いという。
瀧脇大史所長(46)は「ツアーを通して、利用者や家族との距離も近くなっているようだ。皆さんの夢がかなうよう続けていきたい」と話している。