地域活性化につなげる住民主体の獣害対策を推進する「第6回獣がいフォーラム」(同実行委員会主催)が、兵庫県丹波篠山市で開かれ、約100人が来場した。「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」がテーマ。北海道や、丹波篠山市で行われている事例を参考に、被害者である市民、里山に関心を寄せる都市部の住民(関係人口)の力をどのように生かし、また、取り組みをどう発信していくかなどを考えた。
基調講演で、酪農学園大学(北海道江別市)教授の佐藤喜和さんが、人とヒグマの共存を目指す北海道の事例を報告。クマが身を隠すくさむらを解消するため、学生らが地域の人たちを巻き込み、草刈りと併せて茶話会やクマ鈴を手作りするワークショップを展開したり、市民団体が離農した果樹園にクマが来ないように木を切るボランティアを募集したり、リゾートホテルが草刈りをツアーに組み込んだ例などを紹介した。
学生らの取り組みは、退職した人たちが地域活動に参加するきっかけになっているとし、果樹園の木を切る取り組みは、切った木を持ち帰れるので、まきストーブユーザーに受けているとした。リゾートホテルの企画には「お金を払って草刈りに来る人が一定数いるということ」とした。
続くパネルディスカッションでは、佐藤さんに加え、住民で獣がい対策に取り組む地元の丹波篠山市矢代自治会の中井悦夫さん、同市川阪で獣害柵点検ツアーを実施した田渕幹敏さん、放置柿を使ったジャムなどの商品開発に取り組んだ篠山東雲高校の生徒たち、NPO法人・里地里山問題研究所(さともん)の鈴木克哉さんが意見交換し、兵庫県立大学の山端直人さんが進行した。
山端さんは、「そもそも獣がい対策は、持続的に皆が暮らしやすい社会にするためのものであり、いろんな人が関われる地域政策だ」と前置き。住民の立場から、中井さんは「畑が荒らされたら、おばちゃんたちの仕事がなくなり、元気もなくなるのが心配。高齢化で人も不足しており、外部から人が来てくれるのはうれしいし、刺激になる」と歓迎した。
獣害柵点検ツアーを企画した田渕さんは、「アウトドア愛好者はもともと自然が好きで、フィールドを守ることに喜びや価値を感じている」とし、佐藤さんも草刈りツアーを例に「自分のスキルや経験を地域のために残したいという人はいる」と、多様な人が呼べる可能性を示唆した。
篠山東雲高校の長澤莉子さん、西村綾音さんは、柿ジャムがふるさと納税の返礼品になったことで、遠くの地域の人たちが買ってくれたことに驚きとやりがいを感じたことを笑顔で振り返った。さともんの鈴木さんは、食や健康に感心のある人たちに向けて、丹波篠山産の米や野菜をセット販売する計画を紹介。「地域の中に獣がい対策をコーディネートし、発信する人材が必要。売上を雇用する資金にできないか」と、会場の反応をうかがっていた。