兵庫県丹波篠山市西紀南地区を拠点に農業を営む大坂宇津実さん(30)が、同市二階町に「黒豆五平餅の店 米と黒豆」をオープンした。減農薬で生態系に配慮した栽培方法で作った、市が推奨する「農都のめぐみ米」と、特産の黒大豆の黒豆くるみみそを使った五平餅が看板商品。「めぐみ米も丹波篠山のブランドとしてPRしていきたい」と言い、「農家と食のパワーで観光客の人たちに『来て良かった』『また来たい』と感じてもらえるように頑張る」と気合を入れている。
五平餅は、岐阜や愛知、長野、静岡などに伝わる郷土料理。粒が残る程度につぶした米を平らな棒などに練り付け、みそなどを塗って香ばしく焼き上げる。
同店では、米を豆のさやの形に成形して焼き、黒大豆やくるみ、ゴマなどをブレンドしたみそを塗る。米の甘みに加えて、黒大豆ならではのこくと甘みが感じられる。みその他にお好み焼き味もあり、今後、チーズ味などバリエーションを増やしていくという。
大坂さんは、神戸大学農学部に在学中、授業の一環で丹波篠山を訪れ、「農」の奥深さと楽しさ、住民の温かさに触れたことで、農を生業にしたいと移住し、2017年に新規就農。21年に株式会社「AGLI STREET」として法人化した。
「6次産業化」と「店を持つ」という目標を掲げて活動し、昨年、同じく二階町で直営の焼き芋店「恋々芋(ここいも)」をオープン。秋の観光シーズンには行列ができる人気店になった。黒枝豆も販売したところ、「にぎわいがすご過ぎて」と苦笑いし、「それくらいこの町のポテンシャルを感じた」と語る。
「より丹波篠山らしい店を出したい」と考え、丹波篠山が誇る黒大豆と、市が推奨するめぐみ米を組み合わせることができる商品を考える中で五平餅にたどり着いた。片手で持って食べ歩きができることにも可能性を感じたという。「変わらない良さも大切だが、来るたびに新しいおいしいものが増え、『年々、良くなっている』と思ってもらうことも大切。ぜひ味わってほしい」と話している。
五平餅は1個400円。営業時間は午前10時―午後5時。不定休。