全国一の梅の産地、和歌山県でかつてない不作予想となる中、兵庫県丹波市内も枝に実を探すのが難しいほど、寂しい実りとなっている。家でとれた梅を梅干しや梅酒にするのを楽しみにしている人が多いが、「梅干しが漬けられるのか」といった声も上がっている。また、県内では珍しいサクランボ狩りができる「フルーツファーム春日」(同市春日町稲塚)は実がほとんど育たず、今季の開園を中止した。暖冬と高気温が交配に悪影響を及ぼしたとみられる。
県立農林水産技術総合技術センター(加西市)によると、暖冬で開花が平年より2週間ほど早まった後に冷え込んだため、ミツバチの働きが悪く、交配がうまくいかなかった。サクランボは開花後の高気温で受粉しにくくなる性質があり、4月中旬に続いた25度超えの暑さが影響した。
50本以上の梅を育てている丹波市氷上町大谷自治会。1本の木の果実数が「4粒」「5粒」と数えられる木が少なくなく、実付きの良い木でも50粒ほど。例年なら1つの枝で50粒程度なるのは珍しくない。豊作であり余り、直売所に出しても売れ残った昨年と大違いだ。
例年、自治会の活性化委員会で草刈りし、梅をもぐが、ほぼ収穫できない見通し。近くに住む女性は「うちもこんなにひどいなんて」と絶句していた。
梅干しを30―150キロ漬ける企業組合「氷上つたの会」(同町上新庄)は「梅が確保できるのか」と気をもんでいる。秋山佐登子理事長は「うちの木も数粒落ちただけ。枝にはもうなっていない」と言い、仲間うちでも梅の出来は「悪い」しか聞かないという。
約50アールに佐藤錦などが約100本植わっているフルーツファーム春日は、25日から予定していたサクランボ狩りを開園から30年で初めて中止。予約電話を断るのに追われている。
実はなってはいるがほとんどが生育不良。艶がなく、触ると落果する。こちらも順調に生育している実を探さなければ見つからない凶作だ。
同園の駒谷幸正さん(73)は「きれいに花が咲き、喜んでいたのに」と悔やむ。開花期の高温だけでなく、花芽分化時期の昨年夏の高温の影響も感じている。
「毎年、暑さへの危機感を持ちながらやってきたが、今年のように全く開園できない年はなかった。大打撃」と肩を落とす。パック詰めを販売予定だが、そう多く収穫できそうにない。
同センターによると、これから収穫期を迎えるブルーベリーや、花が咲き始めたブドウは共に今のところ順調に育っているという。