「手筒花火」催し実現目指す 60代も「若い衆」の過疎集落 竹で手作り、活性化の起爆剤に

2024.06.12
丹波市地域注目

手筒花火の催しの実現に向けて準備を進めている有志の男性たち=兵庫県丹波市春日町栢野で

高齢化率が6割を超える兵庫県丹波市春日町栢野集落の住民が、地域に人を呼び込む起爆剤にしようと、火薬を詰めた竹筒を手で抱えて火を噴出する「手筒花火」の催しの開催実現を目指し、準備を進めている。地域で繁茂する竹を活用して手作りした筒を住民が抱え、勇壮に噴き上がる手筒花火を、冬の風物詩にしたい考え。先月には初の噴出テストを成功させ、開催に向けた第一歩を踏み出した。

同集落の人口は126人。高齢化率は、市平均の35・6%(3月末時点)を大きく上回る64・3%で、市内全302行政区の中で4番目に高い。15歳以下の子どもは1人しかおらず、3年ほど前には、秋祭りで担がれていた伝統の「子どもみこし」が途絶えた。

若者がいない現状に危機感を抱いた細見浩司自治会長(64)が、人手がかからず、勇壮な催しを開くことで、他地域の子育て世代に関心を持ってもらおうと、愛知県豊橋市で有名な手筒花火の催しを発案。52―67歳の男性7人が立ち上がった。細見会長は「64歳やけど、地域では『若い衆』と呼ばれる」と笑う。

披露する手筒花火は「神影花火(みかげはなび)」と名付ける。「夏はどこも花火をやっているから」(細見会長)と、冬に披露したいという。

2月ごろに竹林でマダケやハチク、モウソウチクを伐採。50センチほどの長さに切り、火薬を入れられるよう、上部からドリルで小さな穴を開けた。作業は半日で済んだ。3月後半には、姫路の花火業者の元を訪ね、火薬を詰めた。

初の噴出テストで、高く火が噴き上がった

先月18日のテストには、噂を聞き付けた多くの近隣住民らが見物に訪れた。警備員を配置し、人と花火の間隔を十分に取るなど、安全面に配慮して行った。

業者のサポートのもと、10本の手筒花火を細見会長が所有する水田のあぜ道に設置。電気導火線でつなぎ、1本ずつ点火した。1本につき約30秒間、金色の鮮やかな閃光が5メートルほどの高さまで噴き上がり、カエルの鳴き声が響く暗がりの農村を明るく照らした。

細見会長は「無事に上がって一安心」と胸をなで下ろした。「伐採して間もない生竹の方が、火が高く上がるかもしれない。火薬の配合も研究していかないと。良い勉強になった。できれば今年中にもう1回上げたい」と前を向いた。

「最終的には屋台なども呼びたい。栢野だけでなく、春日町全体で集落ごとに10本ずつ作って上げれば市内、県内でも一大イベントになる」と、壮大な夢を描いている。

◆安全基準制定にはどれだけかかる? 県の回答は…

噴出テストで使用した手作りの手筒花火

手筒花火の催しの実現には、県が安全基準を制定することが必要。県によると、きちんと定められた基準のもとで手筒花火が披露されたことは県内では1度もないという。

今後、花火業者と県職員の立ち合いの元で噴出テストを重ね、火薬量や、火の粉の飛散距離などのデータを収集。それを踏まえ、適切な火薬量や、噴出時の見物人との距離といった安全基準を定める。県によると、基準制定には「数年はかかる」という。

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