多肉植物ブームで人気のアガベ(リュウゼツラン)―。兵庫県丹波市青垣町小倉の松重友七さん(72)が28年育てているアガベが、初めて開花した。天に向かって真っすぐ2・6メートル伸びた茎の上部に花が咲いている。小学5年生でサボテン栽培を始め、大学は農学部、大手種苗会社の元営業マンという園芸エキスパートの松重さんが「初めて見る」という非常に珍しい花。「28年の時を経て花を付けてくれるなんて」と感激している。
営業先だった愛知県内のサボテン店で48歳の時に購入した。葉が5、6枚で直径9センチの鉢に入った小さな株だった。その後、直径20センチほどの鉢に植え替え、毎年同じように自宅近くの温室で管理してきた。
4月20日ごろから、葉の中心から天に向かってアスパラガスのような茎が伸び始めた。毎日約6センチずつ成長し、1・7メートルほどに伸びた。温室の天井につかえそうになり、屋根付きの小屋に移した。なお成長を続け、屋根から10センチほど手前で成長がストップ。成長が止まった5月28日ごろから、葉に近い下部のつぼみから順に花が咲き始めた。2つから4つの花が一つの塊になっている。
「どんな花が咲くのか期待していた。もっと、ガクや花弁が開くと思っていたけれど、地味。そこだけは残念」と苦笑いする花は、ユリと同じように、3枚ずつあるガクと花びらが反り返ることなく、まるでつぼみのよう。ガクの外に、おしべとめしべが出ている。ハチが訪れており「種が取れたら、実生で育ててみたい」と瞳を輝かす。
松重さんによると、花が咲くと枯れ、子株ができ、世代交代するという。学名は「アガベ・ユタエンシス・ネバデンシス」。「青磁炉」という和名のものとみられるという。