元気届ける舞台 桂む雀さんと愉快な仲間たち 7日ファイナル

2024.06.26
丹波篠山市地域

ファイナルコンサートへの来場を呼びかける、む雀さん(前列右から2人目)と、にじいろハーモニーのメンバーと主催者、関係者=兵庫県丹波篠山市今田町黒石で

落語家・桂む雀さん(63)=大阪市=らの音楽&トークイベント「桂む雀と愉快な仲間たち」が7月7日午後2時から四季の森生涯学習センター(兵庫県丹波篠山市網掛)で開かれる。む雀さんは脳梗塞の後遺症で言語障害が残り、右半身不随になりながらも、再び高座に上がることを目標に、リハビリとしてハーモニカやピアノの演奏に取り組んできた。その成果を披露する場として14年前から仲間と共に開催し、観客に勇気と元気、笑顔を届けてきた同イベントだが、13回目の今回で最終回となる。丹波篠山市民ら男女7人でつくるハーモニカグループ「にじいろハーモニー」も出演する。

む雀さんのひたむきでエネルギッシュな姿に感銘を受けた市民らが同グループを結成し、7年前から6度、舞台を共にしている。メンバーは、太野垣鈴子さん(56)、波部八重子さん(81)、藤本恵子さん(69)、波多野育子さん(28)、田中啓子さん(68)、久合田均さん(87)、浅田美恵子さん(58)。

同イベントでは、む雀さんと、その友人でフリーアナウンサーの三代澤康司さん(64)、タレントの山田雅人さん(63)の3人が、音楽あり、トークありのにぎやかなステージを繰り広げる。プログラムの後半に、同グループが「浜辺のうた」「少年時代」など3曲を披露。エンディングでは、む雀さんら3人と、会場も巻き込んで「ふるさと」を合奏し、盛大に締めくくる。

今回でファイナルとした理由を、主催者の時夢館(タイムハウス)・桂む雀さんを勝手に応援する会の代表、藤本定一さん(72)は、「みんなの気持ちが『やり切った』『ひと区切りつけよう』との思いに至った」と説明。ただ、今後もむ雀さんをはじめ、前を向いて何かに挑戦している人たちのステージを、藤本さんが建てたイベントホール「9614ホール」(同市今田町黒石)で年数回、開催する計画を立てている。

む雀さんは2005年、ラジオ番組本番中に倒れ、以後数年間、自暴自棄の生活を送った。古典落語で文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど上方落語界のホープとして嘱望されていたが、言葉を生業にする落語家にとって言語障害は受け入れがたい現実だった。藤本さんらが見舞いに行くと「死にたい」という言葉を何度も口にしたという。仲間の支えもあって次第にリハビリに励むようになり、14年前、ハーモニカを手に、同イベントの前身「フレンドシップコンサート」の舞台に立った。

「舞台に立ったむ雀さんが、にこっとほほ笑んだ瞬間を今でも鮮明に覚えている」と藤本さん。「む雀さんを応援しようとイベントを開いてきたが、いつの間にか、われわれの方がむ雀さんから元気をもらっていた。7年前には素敵な奥さんまでもらって。想像すらできないできごとだった」と笑った。

同グループのハーモニカ指導を続けてきた久合田さんは、「メンバーには障がいや病気を抱えた人もいるが、む雀さんとの触れ合いを通して気持ちが前向きになっている」とほほ笑み、「本番では、これまで支援してくれた主催スタッフの皆さんと、会場に足を運んでくださったお客さんにお礼の気持ちを込めた音色を届けたい」と話す。

む雀さんは、「あっという間の丹波での14年間。ハーモニカもピアノももっともっと続けていきたいという気持ちになれた。多くの方々と知り合え、舞台に立てる喜びを呼び戻してくれた皆さんに感謝しかない。本番では、自分たちが楽しみつつ、お客さんも楽しませます」と話している。

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