兵庫県丹波篠山市魚屋町に、築100年を超える町家を活用した一棟貸しの宿「八十一(やそいち)」がオープンした。江戸期の流れをくむ中二階の「厨子(つし)二階」の建物をリノベーション。古き良き日本や丹波を感じさせる趣を残しつつ、細部まで自然素材を用いて快適に過ごせる空間に生まれ変わっている。スタッフは、「外国の方にも『和』を感じてもらえる宿。ちょっとぜいたくな時間を楽しんでほしい」と話している。
かつて「矢木陶器店」だった建物。ダイニングや寝室、風呂、キッチンを備える。宿の名称は、国際電話の日本の国番「81」から命名した。
寝室などは京都府綾部市の和紙作家、ハタノワタルさんが施工を担当。壁面に白や炭を混ぜた和紙を用い、和モダンな空間に仕上がっている。
また、随所に大工のこだわりが光り、台所には北海道の古い蔵などで使われる札幌軟石を、風呂には十和田石を使用。桜の木の床材や琉球畳を用いるなど、自然かつ良質な素材をふんだんに取り入れた。
手入れが行き届いた庭が広がり、寝室の縁側に座ってくつろぐと、そこに暮らしているかのような感覚を味わうことができる。
城下町で古民家ゲストハウスやカフェなどを運営する株式会社「Kibbutz(キブツ)」が運営する。
同社の西本和史さん(34)は、「城下町の西側エリアにあることで、町全体の周遊にもつながれば」と期待する。
宿泊は基本的に大人4人まで。料金は時期や人数によって変動する。詳細は公式サイトに。「宿八十一」で検索を。
八十一には丹波市青垣地域で織られている伝統工芸品「丹波布」のギャラリー「蚕糸(さんし)」が併設されている。丹波布伝承館で技術を学んだ小川陽子さんと閑林美圭さんが作品を展示。野山の草木で染めた味わい深い織物が、施設をさらに和の空間にいざなう。
二人は、「丹波篠山は丹波木綿が有名だけれど、もう少し奥に行くと丹波布という物があることを知ってもらえたら」と笑顔。「糸紡ぎの実演などもしていくので、興味のある方はぜひ見に来てほしい」と話している。
蚕糸の営業時間は金、土、日曜の午後1―7時。