兵庫県丹波市内で5―6月、手口が巧妙な詐欺事件が5件相次いで発生した。以前から多くみられる高齢者を狙った特殊詐欺だけでなく、交流サイト(SNS)で知り合った有名人や好意を持つ女性を名乗る相手などによるSNS型投資詐欺も起き、比較的若い中年世代が標的となった。情報技術の発達により手口が多様化する中、丹波署は「対面していない人から勧められる話は詐欺。ネット上で簡単にもうけられるうまい話は転がっていない」と注意を呼びかける。
SNS型投資詐欺は3件。70歳代男性はSNSで知り合った相手に暗号資産の投資話を持ちかけられ、手数料などとして456万円を入金した。
40歳代女性は匿名掲示板「2ちゃんねる」を立ち上げた実業家、西村博之さんを名乗る相手とSNSを通じて知り合い、別人のアカウントから紹介された投資方法に従い、約1000万円をだまし取られた。
50歳代男性は、マッチングアプリでやり取りを重ねた女性を名乗る相手から「一緒に海外旅行に行きたい」と投資を提案された。「アメリカドルに換金される」とだまされ、指定口座に220万円を振り込んだ。
同署によると、40歳代女性と50歳代男性がだまされた事件では、グラフなどでもうけが出ているように錯覚させる専用アプリをダウンロードさせられたという。40歳代女性の事件では4回にわたり約270万円が振り込まれ、信用させた。同署は「被害者に最初は少額の投資でスタートさせ、短時間で何倍もの利益が簡単に出せると見せて、『こんなに簡単にもうけられるのか』と思わせている」とみる。
また、SNSの広告やダイレクトメッセージ(DM)などを通じて副業を勧め、セミナーを受講すれば、受講料に見合うだけの収益をすぐに出せるなどと入金させるケースもあるという。県内では投資詐欺以外でも、警察官をかたる相手から「あなたの口座にあるお金は犯罪収益だ」などと電話がかかり、犯罪収益でないことを証明するために、との理由でネットバンキングに入金させ、だまし取る事案が増加している。
同署は、被害に遭う対象年齢が幅広く、手口も多様化しているため、どのような啓発が効果的か模索しているといい、「とにかく、SNSで外国人のアカウントからメッセージが届いたり、個人口座への振り込みを求められたりした場合には『違和感』を持って」と呼びかける。
一方、高齢者を狙った特殊詐欺は2件起きた。70歳代男性はウイルスに感染したパソコン修理のサポート代金として4万円を支払った。60歳代女性は、日本年金機構の職員を名乗る相手から過払いとなっている年金保険料の返金手続きに必要な費用として約100万円を入金した。
同署は高齢者の特殊詐欺被害抑止に向け、「落ち着いて!!ATMでお金は戻らんよ!!」「まずは警察に相談を」と書かれたポップを、丹波市内64台のATMに先月から順次設置。地元のJA丹波ひかみ、中兵庫信用金庫の協力を得た。高齢者グループの集会などでも署員が積極的に講話を行い、啓発に注力している。