兵庫県丹波篠山市社会福祉協議会が昨年10月から実施している「見守り弁当サービス事業」が好調だ。高齢者や障がいのある人を対象に民間事業者が弁当を配達するもので、1食当たり200円(週3回まで)を助成する上、安否などを確認する「見守り」にもつなげる。以前にも同様の事業があったが、内容を拡充したことで登録者は約4倍に増加。利用者からは、「お弁当はおいしく、運んできてくださる人とのおしゃべりも楽しみ。良いことばかり」と喜びの声が上がっており、市社協は、「良いサービスと認識してもらえているようで良かった。引き続き、見守りにつなげていきたい」と話している。
同事業は、これまで市が行っていた「配食サービス事業」(金曜日)と社協の「給食サービス事業」(水曜日)を統合。旧サービスは曜日が固定されていたが、平日昼ならいつでも使えるようにし、週3回までの助成に拡充した。
対象は、見守りが必要で、買い物や調理が困難な高齢者や障がいのある人。希望者は社協に利用申請し、決定通知があり次第、登録された事業所に弁当配達を申し込む。地域の民生委員か、ケアマネジャーのサインが必要。
支払いは本来の料金から200円引いた額で、後日、事業所が社協に申請し、200円が支払われる仕組み。事業費は市が3分の2、社協が3分の1を負担している。
現在、民間の7事業所が登録しており、弁当配達と見守りを実施。事業所によってメニューや価格、配達できるエリアが異なる。ほとんどの地区で複数の事業所が配達エリアにしていることから、好みに応じて一定の選択もできる。
市社協によると、旧サービスは2つの事業を合わせて70―80人程度が利用していたが、新サービス移行後、これまでに290人が利用登録。「旧サービスは利用できる曜日が決まっていたので、使い勝手が悪かった。また、見守りの必要性を理解している民生委員やケアマネさんが勧めてくださっているようで、利用が増えた」と言い、「かつてはボランティアの皆さんで支えられていたが、高齢化やコロナ禍などで継続が難しくなった面もあった。事業の統合は大変な面もあったが、喜んでもらえているならうれしい」と話す。
配達した先で利用者が出てこなかったことから事業者が家族らに連絡したところ、家の中で倒れており、一命をとりとめたケースもあったという。
同事業に新たに登録した飲食店「ゆかいな仲間」。かまどで炊いたご飯と自然農法で作った野菜、利用する人の健康への思いを詰め込んだ弁当を届けている。
店主の井上めぐみさん(40)は以前から、高齢・過疎化が進み、地域に足が不自由な人が多いと感じており、「店に行ってみたいけれど、なかなか行けへん」という声があったことから、「ならば、こちらから」と、数年前から弁当配達を始めていた。
一人暮らしで体調が悪くなっている人や、外に出づらいため、食事を控えている人がいることに気づき、弁当だけでなく見守りの重要性を痛感。コロナ禍の休止を経て、配達を再開しようと考えていたところ、同事業を知った。
6月末の平日、井上さんから弁当を受け取った利用者の女性は一人暮らし。都会で暮らす息子が月に何度か買い物に連れて行ってくれるが、「日持ちする冷凍食品が多くなる。やっぱり、手作りのお弁当はおいしい」と顔をほころばせる。世間話に花を咲かせることも楽しみで、「一人だから、おしゃべりできるのがとっても楽しみ」と喜ぶ。
井上さんは、「たくさんは作れないけれど、とにかく皆さんが健康でいてくれたら。頑張ってお弁当を作ります」とほほ笑んでいる。