県立人と自然の博物館 (三田市) は26日、 丹波市山南町上滝の篠山層群から発見された恐竜化石の中から、 ティタノサウルス類の頭部の一部を確認したと発表した。 国内で発見された恐竜の頭骨化石としては7例目だが、 竜脚類の頭骨が発見されたのは初めて。 同一個体のまとまった体の骨と一緒に発見されたのも初めてで、 世界的にみても希少という。 もろい頭部の化石が発見されたことや、 尾部に加えて頭部が見つかったことで、 その間に位置する他の胴体や四肢などの化石が埋蔵している可能性も高まった。 さらに他の部分が発見されれば、 東アジアを代表する、 前期白亜紀の竜脚類の化石となる。
発見した頭骨は、 脳函 (のうかん) 後半部という頭部と首の付け根の部分。 約15センチ四方で、 厚みは約8センチ。 尻尾の付け根部分の化石と隣接した位置から見つかった。 恐竜が死んだ際、 背中を中心に弓型に筋肉が収縮した結果と推測される。
ティタノサウルスの頭の大きさは約40―50センチ。 頭部は小さい部位ながら神経系や感覚器官などが集中しているため、 今後他の頭骨が出てくれば、 どのように餌を食べていたか、 どのように進化していったかなどを知る手がかりとなり、 生態を解き明かす上で非常に重要な意味を持つ。
今月中旬、 同博物館で化石のクリーニング作業を行っていたところ、 頭骨を見つけた。 三枝春生研究員は 「頭骨は非常にもろい。 それが残っていたということは、 他の丈夫な部分の化石も残っているのは当然。 さらに慎重に作業を進めていきたい」 と話している。
恐竜発見者の足立洌さん (63) =丹波市柏原町南多田=は 「ある程度予想はしていたが、 こんなに早く見つかるとは思っておらず、 びっくりしている。 一番もろい頭部が出たということは、 電柱くらいの太さがある脚の化石や背骨など、 全身骨格が出てくる可能性が高い」 と期待を強めている。
もう一人の発見者、 村上茂さん (62) =同市山南町下滝=は、 1週間ほど前に同博物館から連絡を受けた。 「頭部の化石は 『出ればもうけもの』 くらいに思っていたので、 驚いた。 本当にうれしい。 狭い面積から尾や頭が出ているので、 化石は1カ所に集中しているのかもしれない。 あとは胴体が出てくれれば」 とさらなる発見に思いをはせていた。
丹波竜が世界規模に
東洋一・福井県立恐竜博物館副館長の話 ティタノサウルス類の後頭部の骨が発見されたことは、 世界的にも数少なくすごいことだ。 種類の特定や学名が付けられる可能性が高くなった。 ティタノサウルス類の進化の過程を明らかにする材料になり、 ヨーロッパ、 アジアとの関連のなかで丹波の分類学的な位置付けがはっきりするのではないか。
石垣忍・林原自然科学博物館副館長の話 竜脚類の頭部が化石として残ることは少なく、 そういうものが見つかるということは画期的なこと。 これからの調査が楽しみだ。
辻重五郎・丹波市長の話 専門家から最も残りにくいと聞いていた頭部が発見されたのはすごいこと。 全身骨格が出てくる可能性が高まり、 秋からの2次発掘が楽しみだ。 恐竜を活かしたまちづくりにも弾みがついた。 より広くアピールし、 展示会など市民が見られる機会も提供していきたい。
大地但・山南町商工会長の話 頭部の骨が出ればと期待していたことが現実になり、 びっくりした。 恐竜化石発見以来、 様々な地域おこしの活動が行われ、 商工会としても活動を支援してきたが、 さらに活動に弾みがつき、 地域が元気になることは、 喜ばしいことだ。
岸本稚世・丹波市観光協会事務局長の話 「丹波竜」 が世界規模の話になった。 今まで以上の仕掛けを考えるとともに、 学術的にきちっとしたことを伝えていかなければいけない。
発掘ボランティアの中西一郎さん (山南町太田) の話 発掘の時から、 恐竜がどんな形で倒れているのか気になっていたが、 尻尾が見つかった辺りから頭部の一部が出てきたことには驚いている。
(写真)篠山層群の中から、日本で初めて発見された竜脚類の脳函後半部の化石。手にしているのは三枝研究員=人と自然の博物館で