約1300本の柿の木を栽培する兵庫県丹波市市島町の「桑村農園」が、大量発生したカメムシと夏の猛暑の影響により、過去に例がないほどの大凶作に見舞われている。例年なら全体で約20トンある収量は、今年は半減以下の約7トンとなる見込み。特にカメムシの標的となった甘柿の被害がひどく、収量はほぼゼロ。渋柿の西条柿も例年以上の暑さで色づきが遅れた。コスト面や労力などを考慮すると対策にも限界があり、生産者は頭を悩ませている。
同農園は山裾にあり、約2・6ヘクタールの広い敷地を誇る。家族経営で西条柿約850本、甘柿約450本を栽培。甘柿は「富有柿」「新秋」「太秋」など十数種類の品種がある。
実がなりかけた梅雨ごろからカメムシが大量発生。カメムシは本来、冬の寒さで死滅するが、県によると、昨季の暖冬の影響で越冬する個体が多かったという。県は5月、果実を傷つける果樹カメムシ類が平年以上に発生しているとして、全域に注意報を出した。
特に甘みの強い甘柿に群がり、果汁を吸われることで実が弱り、次々と地面に落ちた。薬剤も例年通りに散布したが、あまりの多さに対策が及ばなかった。
さらに夏場には例年以上の猛暑が重なった。丹波市柏原町に設置されている気象庁アメダスによると、7―9月の日平均最高気温は、7月が32・6度(平年値30・8度)、8月が34・6度(同32・6度)、9月が32・6度(同27・9度)を記録。9月も涼しくならなかったため、色づきが同農園独自の販売基準まで進まず、例年より10日程度、販売開始が遅れた。何とか色づき、実がなったものもあるが、それらはカラスやヒヨドリといった野鳥にかじられるありさまとなっている。
同農園代表の桑村初真さん(53)は「40年栽培しているが、ここまで不作の年はなかった。秋の味覚として、京阪神などからわざわざ求めて来られるお客さんに申し訳ない」と嘆く。「カメムシを駆除するためだとしても、100万円もうけるために農薬代に100万円かけては意味がない。山の中まで散布もできない。ハウス栽培ではないので暑さを防ぐのも難しい。手間もかかる」と悩み、「毎年適度に涼しく、雨が降ってくれることを願うしかない」と話す。