昼はご飯大盛り無料の定食があり、夜は割安で宴会ができて人気を集めた食堂兼居酒屋「おばちゃんの店」(兵庫県丹波市市島町上垣)が31日、13年の営業に幕を下ろす。「おばちゃん」こと名物店主の藤田洋子さん(77)は、「人が寄る所をつくりたい気持ちでやってきたが、体調も経営的にも維持が困難。お客さん、スタッフ、家族のおかげ」と感謝し、「かわいがってくれてありがとう。ありがとう」と繰り返した。
2012年に開店。「働く人にお腹いっぱい食べてほしい」と、ご飯の大盛りは無料。秘伝のたれに漬け込んだ鶏のから揚げが人気だった。夜は、飲食店が少ない市島の「一杯飲み屋」として幅広い世代に愛された。若者の宴会は飲み放題にし、「ようけはもらわんかった」(藤田さん)。きっぷの良さとおばちゃんの軽妙なトークが客を引き寄せた。
2022年に脳梗塞と大腿骨骨折で8カ月の入院、リハビリの末、店を再開。左半身に軽度の麻ひを抱えながら、周囲の支えで厨房に立ってきた。ところが昨年、腰に強い痛みを覚え、脊椎間狭窄症と診断された。痛みが増すところに、コロナ明けで「宅飲み」が定着し、夜の客足が戻らなかった。家賃の値上げ、物価高も重なり、再開後は赤字経営。テナントの契約は1年残っていたが、腰の手術をし、健康を取り戻したい気持ちも募り、閉店を決めた。
「コロナの時の給付金をお客さんに還元した。これ以上は続けられない」と藤田さん。「看板の似顔絵もやめたがってるわ」と、“元気な口”で最後まで冗談を飛ばした。