兵庫県丹波市で、春日朗読ボランティアひまわり会、さまざまなボランティア活動を長年続けている蘆田清美さん(64)=同市青垣町=、特別養護老人ホーム山路園(山南町野坂)の澤村安由里施設長(60)=同市氷上町=の1団体2人が、今年度の厚生労働大臣表彰を受けた。ひまわり会と蘆田さんはボランティア功労、澤村さんは社会福祉事業従事功労。
新聞や広報を朗読 ひまわり会
ひまわり会(13人)は1979年設立、県内でも歴史が古い。丹波新聞、丹波市広報、市社会福祉協議会の広報を朗読し、月に2回、視覚障がいのあるリスナー2人に届けている。
機材は今もカセットテープレコーダー。1回につき片面30分、両面で60分のテープ1本分を録音する。読み間違いをするとテープを止め、少し巻き戻して録音し直すアナログなやり方。
リスナーにとって身近で、興味を持ちやすい記事をあらかじめ自宅で選ぶ。黙読で読めた漢字が、音読すると読めないことがあり、声を出し、所要時間を計る予行練習をして録音に臨む。丹波新聞は「丹波春秋」「記者ノート」が定番。後は、読む人の裁量。
市の予算は細かい数字まで読み上げる。「7」「約」は「イチ」「ヒャク」と聞き違いが起こるので「ナナ」「およそ」と読むなど、朗読のルールに沿っている。
上山幹子さん(67)=同市春日町=は、熱心に朗読に取り組んだ義母と代替わりで入会。「アナウンサーではないので、せめて滑舌良く、早口にならないように、分かりやすく読むよう心がけている」と言い、竹内ひとみ代表(67)=同町多利=は、「先輩方がこつこつ続けてこられ、頂いた立派な賞はメンバーの励みになる。聞いてやろうという方がある限り、長く続けたい」と抱負。二人は、「自分の声が誰かとつながっていることを実感する喜びがある」と語った。
朗読や語り部続ける 蘆田清美さん
蘆田さんは、「丹波のむかしばなし」の語り部「日々草」を29年、観光ボランティアガイドを24年、朗読ボランティア「りんどう」を22年、この他にも布絵本を作る図書館ボランティアなどさまざまな活動をし、青垣ボランティア連絡会副会長などを歴任してきた。
声を出す活動が多い中でも一番好きなのが「朗読」。「うまく読めてるやろな、の自己満足です」と笑う。
2002年に養成講座があり、「りんどう」に入会。会員は現在8人。蘆田さんが最古参。毎月2回、リスナー4人に届けている。1回が丹波新聞、もう1回が市広報や市社協だより、市議会広報。
10年ほど前からデジタル化。パソコンを使いCDに焼く。デジタルで長時間録音ができるが、テープ時代の名残りで今も60分、90分を区切りにしてしまうという。デジタルはとつとつとした読みを編集でスムーズにすることができる利点がある一方、失敗しても編集が効くため、練習せずに収録に臨むので読み間違いが生じがち。「非効率かもしれない」と苦笑いする。
リスナーが最近1人増え、しばらく中断していた交流会を再開した。絵本を読んでほしいと要望が出た。「遠慮してか、朗読の技術的なことは言われない」とほほ笑む。
リスナーが、障害者手帳の1、2級を持つ視覚障がい者に限られており、加齢で文字が見えづらい高齢者は対象にならない。「リスナーさんの裾野を広げたいし、世間的に知られていない、朗読ボランティアという存在を知ってもらいたい」と話している。
山路園施設長を27年 澤村安由里さん
澤村さんは、社会福祉法人・山路福祉会が運営する特別養護老人ホーム山路園で27年間施設長を務めている。看護師、保健師として勤務し、結婚を機に義父が山南町で新しく開設することになった老人ホームの運営を手伝うことに。主任相談員として就労し、1997年に施設長に就任した。当時、県内最年少の施設長だったという。
9年前には、地域の公益的な取り組みを連携して行うことを目的に、市内18の社会福祉法人が参加する「ほっとかへんネット」が発足し、会長として奔走する。また、県内の「ほっとかへんネット」の連絡会代表として、各地の同ネット立ち上げを支援してきた。
お年寄りだけでなく、児童、障がい者、と関わる分野が広がるにつれ、「福祉を大学できちんと勉強したい」との思いが湧き、2022年に日本福祉大学福祉経営学部、24年に東北福祉大学大学院社会福祉学修士課程を卒業した。
「困っている人が行政から支援を受けることが福祉ではなく、自分がより良い生活をするための自助、公助、共助の全てが福祉。弱者とされる人たちも、支援され、守られるだけでなく、誰もが役に立てる社会づくりが理想」と話す。
クリスチャンで、「人からの評価や肩書よりも、神様が全て見ていてくれて、働きに報いてくれる」との信条で奉仕している。「今60歳なので、あと10年は丹波市や県内の地域福祉のために頑張りたい」