兵庫県丹波市は3日、同市氷上町香良の民家敷地内で、サクラやモモなどの木を枯らす特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」の成虫が見つかったと発表した。兵庫・丹波地域(同市、丹波篠山市)では初確認。農業被害やサクラを枯らし景観悪化をもたらす。対策は早期発見、早期防除。市は疑わしい成虫やフラス(木くずと混ざったふん)を見つけた場合、市環境課への通報を求めている。
成虫は黒い体に赤い首。体長2・5―4センチ。5月末―8月が成虫の繁殖行動の最盛期。樹皮に最大1000個の卵を産み、バラ科の樹木の内部を食い荒らす。幼虫は2―3年かけ成長する。
2022年度以降、県内は明石、芦屋、神戸、西宮、三田の各市で確認されている。丹波市は6市目。昨年度、丹波市と隣接する京都府福知山市(三和町)でも確認された。丹波篠山市は未確認。
氷上町香良に住む男性(4年前に静岡県から移住)が6月24日、スモモの収穫中、首の赤いカミキリを見つけたのが最初。「かっこいい」と撮影した。6月27日に、三田市で幼虫が見つかった新聞記事を読み、クビアカと気づいた。すぐに県庁の担当部署にメールで通報した。返信がなく、7月2日に捕殺したクビアカを持参し、市役所に出向いた。
県、市、専門家が調査し、被害木のスモモとモモの木各1本を伐採。成虫とサナギ各1匹、幼虫5匹を駆除した。近くの民地でも成虫1匹を駆除した。中から幼虫が出てきても、飛散しないように覆う対策もした。市によると、木を切り倒した後、現場に戻ってきた雄もいたという。
男性は山梨県で果樹栽培の経験があり、手が入らず放置されていた庭のモモやスモモを剪定。3年かけ収穫ができるようにした初年度だった。
□蜜、ヤニに注意
県、市は繁殖拡大を防ぐ水際対策に乗り出しており、7日には同カミキリに詳しい県立人と自然の博物館の三橋弘宗主任研究員が来丹。巡視する職員に成虫やフラスを見つけるこつを教えた。
巡視では発見された地域を含む氷上さくら公園(同町犬岡)の加古川堤防桜並木をパトロール。三橋さんは、「昆虫から攻撃された木は、蜜、ヤニを出す。蜜やヤニがある木は要注意。傷んでいる古木も狙われる。フラスが見つかるのが多いのは、根に近い部分」などと説明した。
また、同カミキリは卵が成虫になるまで3年かかることから、成虫と、成虫になる寸前の3年目の幼虫を駆除することを最重視するとした。「6―8月が交尾期。1度に1000個の卵を産む。交尾の機会を奪うことが最も重要。成虫になる寸前の幼虫を見つける手がかりが、大量のフラス。1年目、2年目の幼虫のフラス量は少ない。それらは目印をしておいて後で処置する」とした。
□全滅の脅威
市と県はそれぞれ観光果樹園フルーツファーム春日(同市春日町)を訪ね、モモ、スモモ、サクランボなどに被害がないか調査に訪れた。
同園の駒谷幸正さんは、「クビアカの好きなバラ科の果樹ばかり。全滅するかもしれない脅威を感じている」と言う。
予防ができず、成虫を見つけたら駆除する、幼虫を見つけたら薬剤を注入して駆除するといった対症療法。「私にしたら死活問題だが、一般の人にクビアカツヤがどれほど悪さをするかが、知られていないように思う。畑に梅が1本だけ植わっているというような家も多い。行政もそこまで把握ができない。放置されている木もある」と、市民の関心、理解が高まることを期待している。
三橋主任研究員の話
不規則に、飛び火のように生息が確認される場所が出てくる。いったん広がってしまうと、川沿いにたくさん植わっている桜の伐採など莫大な費用がかかる。今、専門家を入れて予防調査し、駆除活動をすべきだ。市民やボランティアはプロを補完する存在。市民に注意喚起と情報提供を募るだけで解決する問題ではない。
個体数が増え、雄と雌が出合う機会が増えれば手のつけようがなくなるが、今はそこまでではない。成虫は1カ月くらいで死ぬ。個体数を減らし、雄と雌が出合う機会を極力減らす。



























