能舞台「江月庵」が完成 能楽師の上田敦史さん 山間に「幽玄の世界」誕生

2025.07.27
丹波市地域地域歴史注目観光

開館した「江月庵」で上演された能=兵庫県丹波市氷上町石生で

兵庫県丹波市の能楽小鼓方、上田敦史さん(52)が代表を務める会社「伝楽舎」が水分れ公園(同市氷上町石生)そばで建設工事を進めていた、能舞台と茶室を備えた文化体験施設「丹波みわかれ能舞台 江月庵」が完成し、開館記念公演が開かれた。同施設建設に寄付をした人ら計120人ほどが招待され、複数の演目を堪能。能楽師による洗練された幽玄の世界が、山間に誕生した施設内に広がった。

鉄骨造で延べ床面積は200平方メートルほど。能舞台は床板にヒノキを張った三間四方(5・4メートル四方)で、シンボルとなる大きな松の絵が表現された「鏡板」は、同市の丹波の森公苑で長年、保管されていたものを譲り受けた。

また、鑑賞者に能を存分に楽しんでほしいと、客席側に近い舞台の柱を1本設置せず、演目を観やすいように配慮した。

開館のテープカットを行う関係者

「江月庵」という施設名は、上田代表が独立する際、師匠で人間国宝の大倉源次郎さんに名付けてもらった小鼓の稽古の会「江月会」から取った。

観光のツアーに組み込んだ公演や、地元向けに無償公演などを展開する。一般にも舞台を有料で貸し出し、芝居や日本舞踊、西洋音楽などでの利用ができる。神聖な空間とする能舞台上では、ジャンルを問わず白足袋を履いて上がる。施設の一棟貸にも対応し、宿泊することもできる。江月庵建設に寄付をした人を招いた公演も予定している。

完成式典では、施設内でテープカットなどを行った後、複数の演目の上演があった。祝言能「猩々乱」は、舞いや謡いを担う「シテ方」、上田代表を含む小鼓や笛などの「囃子方」が舞台に上がってめでたい演目を披露し、鑑賞者を魅了した。

上田代表は「能舞台には、稽古や発表、研さんの場としての役割だけでなく、日本文化を未来につなぐ継承の場としての思いもある。歴史や文化をベースにした新しい取り組みを発信していきたい」と話していた。

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