7月30日に国内観測史上最高気温となる41.2度を観測した兵庫県丹波市。7月の月雨量(同市柏原)はわずか58㍉で、雨が降らないまま2週間以上が過ぎた。高気温も災いし、市内一円で、ダム、ため池、川の水が乏しくなっている。一部の田では、稲が枯れる干ばつ被害が現れている。神戸地方気象台は「当分晴れの日が続く」とする。米を中心に農業被害が大きくなる恐れがある。
◆昨年末から少雨
少雨は昨年から続いている。特産の丹波大納言小豆の凶作の原因になった9月の記録的少雨(ひと月でわずか24ミリ)の後、10月、11月はよく降ったが、12月は平年値の半分。年が明けても少雨傾向は続き、1、2、4月は平年値の30%台。田植えは乗り切ったものの、梅雨が短く、水位、水量が回復しなかった。
◆水が来ない
出穂した稲に水が必要になる時期。同市市島町竹田地区で水稲を50ヘクタール栽培するひょうたん農場。国道175号沿いのほ場は、前山、竹田両地区の水がめの「大杉ダム」(同町大杉)の貯水量低下や送水管の水漏れなどで十分な水を受けられず、竹田川の井堰から取水する同川右岸の田んぼは、川の水が減り、井堰から水路に水が入らなくなった。
◆麦のような茶色
中竹田の友政で栽培している酒米「HyogoSake85」。こうべを垂れるほど実っていない稲穂が、収穫期の麦のような茶色に変色し、立ち枯れている。田の地表にひびが入っている。
2002年に完成した友政の竹田川第二統合井堰。地元関係者が7月31日に集まり、50年以上前のディーゼルエンジンとバーチカルポンプを引っ張り出し、購入以来十数年、一度も灌漑用に使ったことがなかったエンジンポンプと2台並べ、川の水をくみ上げている。
同農場のスタッフと協力し、ポンプを据えた常石寿栄治さん(77)は、「こんなに水がないのは経験がない。せっかく植えた稲がしおれるほど情けないことはない」と悔やみ、「気温が高いのは、クーラーの効いた部屋にいたらやり過ごせる。水は何ともならない」と深刻に受け止めている。
◆秩序崩壊
同農場の須原隆一さん(42)は「枯れた米は、くず米にしかならない。これから被害が拡大し、この秋は、間違いなく米が足りない」と客観的に見ても、作柄は悲観せざるを得ないという。
水不足対策でできることは「何もない」ときっぱり。乏しい水を割当制にするなど、助け合う人がいる一方で、水を巡るいさかいをあちこちで耳にしている。「村々に水利のルールがあるのに秩序が崩壊し、けんかが生じている。正直、親切でおとなしい人の田んぼほど枯れる。いろいろ考えさせられる」と語った。
◆日に日に減る
市内の農業用ため池は233(台帳登載分)。春日に82、市島に50と由良川流域に多い。これまで開けたことのない、底近くの栓を開けている所も多い。最も大きいのが、大杉ダム。同ダムの貯水率は4・7%(1日午後3時)。県篠山土地改良事務所によると、昨年のこの時期は80%、一昨年は100%あったという。同事務所の藤尾和子所長は、「日に日に減っている。遠くまで水を送るには、水の高さが要る。送れる水の量が減り、高さが低くなると、末端まで届かなくなる」と、貯水量の低下が招く干ばつ被害を懸念する。
市内の27改良区が加盟する市土地改良区協議会によると、16改良区が114機の揚水機場を持っている。水利組合や農会で整備したポンプもあり、この数字はほんの一部とみられる。取水井堰の数は、県、市とも「把握していない」という。地下水のくみ上げ、表流水の取水も厳しくなっている。
◆雨の元がない
神戸地方気象台は、「空気中の水蒸気が凝結し、雨になる。今は雨の元がない。日本の真上に座っている太平洋高気圧が東に動くなり、気圧が弱まるなりし、南からの湿った温かい空気が入りやすくならないと、まとまった雨が降らないだろう」と話している。



























