米高値に高温少雨で… 水稲作付↑特産の黒大豆↓ 秋冬のシーズンへ「品薄懸念」

2025.08.06
地域注目

主な作付け計画

兵庫県丹波篠山市内の今年の主な作付け計画がまとまり、水稲の作付面積が昨年より約74㌶、およそ3%の増となった一方、特産の黒大豆が約66㌶、約9%減となったことが分かった。市農都政策課は、昨年から今年にかけて米の高値が続いていることや、近年の高温少雨で黒大豆の作柄が芳しくないケースがあることを受け、黒大豆を減らして米を増やす動きが起きていると推測。同課は、「ある程度は予測していたが、これほどとは。秋冬の黒大豆シーズンへの影響がどうなるか」と不安を募らせつつ、「黒大豆の作付面積は減ったが、作柄を良くして収量を増やしてもらえるよう、JAや農業改良普及センターと連携して、灌水などの呼びかけに力を入れたい」としている。

昨年の水稲の作付面積は、2248㌶だったが、今年は2322㌶、3・3%増となった。近年はプラスマイナス1%程度で推移していたという。

対して黒大豆は昨年の747㌶から680㌶に。66・8㌶減で昨年比91・1%にとどまった。同課は、「不作と言われた年の翌年に20―30㌶ほど減ることはあったが、ここまでの減少はなかった」と話す。

実際、不作だった一昨年から昨年にかけては、水稲がプラス15㌶、黒大豆がマイナス22㌶だったため、今年が異例の動きということが分かる。

また、保全管理や不作付地などは今年、昨年の444㌶から436㌶へと微減。米の作付けに活用されたとみられ、同課は、「増え続けていた不作付地が減ることがあるとは」と驚く。

背景には「高く売れて、機械化できており、作付面積を増やすことが容易な米」と「まだまだ手作業が多く、天候によっては出来が悪いかもしれない黒大豆」が天秤にかけられ、米が増えたとみられる。

市内のある農家は黒大豆を2割程度減らし、米に切り替えた。自家消費のほかにJAへの出荷や親戚、知人分を栽培してきたが、昨年来、知人の知人、そのまた知人などからも注文が来るようになり、米の作付けを増やしたという。

一昨年は高温少雨で黒大豆のさやがほとんど付かず、辛酸をなめた。そこにやってきた米の高値。「あまり状況に踊らされたくはないという思いと、喜ばれ、売れるのなら作りたいという思いで米を増やした」と心情を吐露する。

また、「黒大豆の枝豆は毎年、注文してくれる人がいるので今年も例年並みを予定している。そのため冬の黒大豆がいつもより減ることになると思う」と話す。

市内では昨年実績で黒枝豆は234㌶、黒大豆は510㌶が栽培された。

近年、不作の影響もあって枝豆が増加傾向にあることから、市地域農業再生協議会は、黒大豆に対する補助金を強化するなどして枝豆への傾倒を抑制しようとしているが、米の高値という思わぬ要因がさらに黒大豆の収量を減らす可能性があるという。

また、同じく特産の山の芋は、栽培農家の減少もあって昨年の17㌶から15㌶へと減少に歯止めがかかっていない。

同課は、「米が主要な農産物のまちなら米の作付け増加は歓迎すべきことだが、ほかに特産があるまちでは特産が影響を受けることになる。黒大豆の出荷減や品薄になることが懸念される」とし、「米の価格が落ち着けば元に戻る可能性もある。ただ、今年も雨が少なく、先行きは不透明」と気をもむ。

一方で、「作付けが減ってしまったことはどうしようもないため、高温少雨の中でも収量を維持し、作付け減との差を埋めることができれば」と言い、新たにスタートさせた、10日間隔で灌水のタイミングを知らせる「黒大豆かん水アラート」などで農家をサポートしていくという。

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