通信制高校の3年生、兵庫県丹波市春日町の齋藤詠空さんが、夏休みに同市内のアフタースクール16カ所で、オリジナルの段ボール工作キットを使った「こども工作教室」を開いている。7月23日から8月27日にかけて、計9日間開催し、約1200人の児童が参加する予定。かつて不登校を経験した詠空さんは、高校生最後の夏休みに「好きなことを生かして、子どもの居場所をつくる」という夢に向かって全力で取り組み、家族も一丸となって応援している。
幼少期から段ボール工作が得意で、「工作」という漢字と自身の名前から着想した「エサク」のニックネームで活動。アフターでは、詠空さんがパソコンで3Dデザインを描き、レーザーカッター機でパーツを切り抜いて用意したキットを使い、1・2年生は「スマホ」、3―6年生は「トランシーバー」を作っている。子どもたちはパーツに好きな色を塗って接着剤で貼り合わせ、画面を描いて“世界に1つ”のオリジナル作品を制作。どのアフターでも「楽しい」と好評を呼んでいる。
コロナ明け不登校に
詠空さんが工作教室に踏み出すまでには紆余曲折があった。小学6年生の3月、新型コロナウイルスの影響で一斉休校になった世代。小学時代は友だちが多くいたが、3カ月の休校が明けて中学校に通い始めると、「周囲となじめない」と感じたという。仲の良かった友人たちともいつしか距離ができ、中学2年生ごろから不登校になった。高校はクラーク記念国際高校三田キャンパス(三田市)に進学した。
子どもと関わる
「工作を通じて、子どもたちと関わるボランティアがしたい」と考えていた詠空さん。アルバイトでためた資金でレーザーカッターを購入し、作品作りの幅が広がった。幼稚園での実習で自信もついた。
活動の機会を増やしたいと、丹波市内の関係機関にメールや電話で連絡を取り、さらに一歩を踏み出す。そこで、今年度から市内4地域のアフター運営を受託している株式会社クオリス(本社・大阪市)の丹波統括マネジャー、高島清香さんとつながった。
「挑戦したい」
詠空さんと面談して真剣さに心を打たれた高島さんは、夏休みの工作教室を提案。「1200人分の用意がいるけど大丈夫?」との確認に、詠空さんは「やります」と答えた。「このまま高校時代を終えるのは嫌だ。最後の夏に何かに挑戦したい」。焦りにも似た気持ちが原動力になったという。
家族総出で協力
家族も一丸となって挑戦をサポート。父の洋一さん(46)、母の奈津子さん(47)、祖父の純一さん(74)、祖母の民子さん(73)、妹の楓さん(春日中2年)の全員が、自宅でのキット作りやアフターでのワークショップ運営などに力を貸している。
「自慢の孫に、最高の応援をしてやりたい」と祖父の純一さん。母の奈津子さんは「中学時代はしんどそうだったが、今回の行動力は親から見てもすごいと思う。ぜひ成功させてやりたい」と話す。
大学で子どもと芸術について学ぶという目標もできた。「夢に向かって進めている充実感があり、楽しい」と詠空さん。家族の応援を背に、全工作教室の終了まで走り続けている。




























