丹波市が建設する一般廃棄物処理施設を受け入れた春日町野上野。 反対運動を乗り越え、 ようやく用地決定に落ちついたものの、 肝心の処理方式はなお決まらず、 勢いよくスタートがきれずにいる。 「ごみは毎日出る。 市民に危機感はあるのか」 「安全な施設、 環境の良い地域にしたい」 ―。 不安と期待が交錯する。
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同施設の建設地をめぐっては、 市がまちづくりの視点を取り入れ、 施設を受け入れる自治会に対して最高で3億円の交付金を支給する 「公募方式」 で行われ、 注目を集めた。 4自治会から応募があり、 同施設建設委員会が2007年2月、 「春日町野上野が妥当」 とする答申を市長に提出したが、 近隣地域から反対運動が起こる騒ぎとなった。
野上野地区が地区内で別の用地を探し、 市に用地変更の手続きをとったのが今年6月末。 約1年半かかって用地問題は落ち着いたものの、 言い換えれば 「用地しか決まらないまま」、 ひかみクリーンセンター (氷上町稲継) の使用期限の 「2011年3月末」 が迫る。
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現在、 市は用地変更に伴う進入道路を 「設計中」。 騒音、 大気、 水などの生活環境に及ぼす影響をみる環境アセスメントを 「実施中」。 さらに新施設整備の基本計画を、 今年度内をめどに 「作成中」 だが、 その中に盛り込むべき肝心の処理方式の研究も専門家による外部団体 「日本環境衛生センター」 に 「委託中」。 処理方式が決まらなければ、 施設の規模、 総事業費、 ランニングコストなどの詳細も定まらない。
市は工期の遅れを認めながらも 「間に合うよう努力する」 との見解を崩していないが、 「文化財調査で何か出てくれば、 もう無理」 との見方さえ強まっており、 進捗はギリギリのラインだ。 仮に間に合わないとなれば、 完成するまでの間、 同センターに運び込まれているごみをどうするのかという課題が浮上する。
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建設用地の公募が締め切られる前の06年8月、 同施設整備計画策定委員会が新しい処理施設を、 ごみを蒸し焼きにして炭化物にし、 燃料として再利用する 「炭化方式」 とする答申を提出した。
今年5月になって市は、 同策定委に専門家がいなかったとして外部団体に研究を委託。 しかし、 市議会からは 「炭化物の受け入れ先があるのか」 などとして再考を求める声も上がっている。 市当局は 「策定委員会の答申を尊重」 しつつ、 同センターの研究結果をもとに市長が判断するとしている。
議場でのやりとりに戸惑っているのが、 地元の野上野自治会だ。 答申にあった炭化方式とはどんなものか、 市に説明を求め、 導入した施設を視察し、 「環境面での安全性に優れている」 と判断したうえで、 建設地として応募した経過がある。 山本義敬自治会長は 「仮に処理方式が変わるとなれば、 また一から始めるのと同じ。 建設地で苦労した後だけに住民がどんな反応をするか、 もう予想すらできない」 と話し、 「2011年4月稼働などと言っている状況でなくなる」 のは必至だ。
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現在、 NPO法人の認証取得に向け準備を進めている 「えこあ~す丹波」 は、 生ごみの堆肥化の推進、 有機農産物の普及をめざす。 女性を中心に共感を呼び始め、 処理場ができる野上野地区からも賛同の声が上がっている。
同グループが求めるのは、 処理能力60? (日平均)、 建設費60億円とされている施設の規模を、 できるだけ小さくすることだ。 昨年度、 市内から出た燃えるごみは約1万4000?。 生ごみはうち、 約30%という。
松山禎之理事長 (春日町東中) は話す。 「生ごみの80%は水分。 燃料をたくさん使って水分を燃やそうとするようなむだはすべきでない。 さらに減量化と逆行するような、 処理場を維持するためにごみを集めてくるようなことはなおさらだ。 新しい処理場ができる今こそ、 環境施策に対して丹波市が大きく変わる転機になれる」。 (芦田安生)