「ありがとう」

2012.03.26
丹波春秋

 「ありがとう!感謝のメッセージ」をテーマに丹波市が全国公募し、入賞した作品を集めた冊子を読んだ。家族らに対して感謝の思いを抱いた体験などが簡潔につづられ、40ページほどの小冊子ながら温かい心であふれている。▼感謝。この言葉には、個人的な思い出がある。ある事情で追い詰められた時期のこと、知人の家に宿泊した。翌朝、目覚めると、床の間に掛けられた軸に目がとまった。そこにはこう書かれていた。▼「暑ければ感謝し寒ければ感謝し/人来れば感謝し来らざれば感謝し/金あれば感謝し金なければ感謝し/賞めらるれば感謝し罵られれば感謝し/病めば感謝し息が切れれば感謝し/ああ永遠の感謝/南無阿弥陀仏」。▼目からうろこの思いがし、知人と交わした前夜の酒がすっと抜けた。軸を前に座り直して何度も読み返すうちに、心が穏やかになった。どんな境遇にあろうと、その境遇を喜ぶ感謝の思いを持つと、姿勢が前向きになり、心を平安にできる。感謝することの大切さ、感謝は生きる力になることを教えてくれた。▼知人に聞くと、その軸を掛けていたのは、私へのメッセージとして意図したものではなく、たまたまだった。だからこそ、その言葉に出合えた縁がありがたかった。「ありがとう」にまつわる私的な思い出である。(Y)

 

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