大阪大学教授 中野 貴志 (なかの たかし) さん

2004.01.22
たんばのひと

未知の新粒子を発見
大阪大学教授 中野 貴志 (なかの たかし) さん (吹田市在住)
 
1961年(昭和36年)大阪市生まれ。 3歳の時に青垣町へ。 柏原高校、 京都大理学部卒、 同大学院博士課程修了後にカナダのアルバータ大学研究員。 阪大核物理研究センター助教授を経て2000年から教授。
 
 物質を作る最小の基本粒子である 「クオーク」 5個を発見し、 昨年12月に日本物理学界の最高賞 「仁科記念賞」 を原子核素粒子部門で受賞した。 兵庫県西播磨にある 「大型放射光施設スプリング-8」 を活用している研究グループ60人のリーダー。 2002年8月に1人で解析を進めるなかで、 その存在をとらえた。 それまで、 中間子はクオーク2個、 陽子や中性子はクオーク3個から成るといわれ、 4個以上の存在は実証されていなかった。
 「発見は本当に偶然でした。 光を物質に当てて反射させる実験で、 光の一部が標的に反応せずに、 素通りしてターゲットの近くにあった検出器と反応しました。 普通ならば、 そのデータは捨てるのですが、 さらに解析を行ったことが今回の発見につながりました」 と話し、 2000年の2月オーストラリアであった学会でヒントを得た。
 「一緒に昼食を食べていたロシアの理論物理学者が、 『私は、 隠し玉を持っている。 ある新粒子を予言している。 その新粒子を探さないか』 といってきました。 面白いと思い、 心にとどめていました」 という。
 「今後、 5つのクオークの性質、 内部の様子を解明したい」 と意欲を示す一方、 「物の性質を研究するうえで、 大体わかっているが、 計算的には解明されていない分野の研究に役立つのではないか。 化学、 経済などの分野にも応用できるかもしれない」 と期待する。 「指導している大学院生には、 先生と呼ばないように言っている。 物理の議論に限れば、 師弟関係は通用しない。 うかうかできません」
 中学時代に物の成り立ちに興味を抱いて以来、 物理の道を志した。 「高校の物理の先生は、 ここが違うと教科書の一文を消すこともあった。 何でも疑う姿勢の大切さを教えられました」 と話す。 研究に没頭の毎日だが、 本の乱読や水泳で気分転換も忘れない。

(臼井 学)

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