震災犠牲者追悼に6433回の鐘鳴らす 門脇 靖巖 (かどわき せいがん) さん

2004.01.25
たんばのひと

 山南町太田、 慧日寺の住職。 阪神・淡路大震災から丸9年の節目に、 死者と同数の6433回の鐘をついて慰霊する催しを今年初めて行った。 震災発生時刻の17日午前5時46分から地元有志らが鐘を鳴らし始め、 終了したのは翌日午前8時ごろという約26時間にも及ぶ長丁場だった。


  「毎年17日の正午に読経とめい福を祈る鐘つきをするのが恒例になっていましたが、 仏教の7年忌にあたる3年前に、 亡くなられた人数の鐘をつけないか、 と考えました。 数えながら鐘をつくことで、 犠牲者の多さを実感してもらえるのではないかという思いもありました」   「今年は17、 18日が土、 日曜日に当たっていたので、 私も入っている村おこしグループ 『五月会』 の集まりで話をしたところ、 『やろうか』 と乗ってくれました。 昨年12月ごろに寺総代に正式に話をすると同じくやる気になってくれ、 さらに若い人たちのグループ 『遊友会』 のメンバーにも手伝ってもらうことになりました」   「事前の準備や打ち合わせはほとんどしていません。 御詠歌の会の方たちが飛び入りで合唱を申し出てくれたのはうれしかったです。 食事は女性たちがいろいろなものを工夫して作ってくれました。 寒さしのぎにかがり火をたき、 そばで薪割りもしていました。 みんなが全部やってくれたのでありがたかった」   「記帳した人だけで230人の参拝者がありました。 町内が中心ですが、 神戸市から来てくれた人もいます。 2階部分に鐘がある鐘楼堂なのですが、 お年寄りや足の不自由な人が階段を上がるとき、 知らない人でもみんなが支えてくれました。 そういう人の温かい心にふれることができ、 よかったなと思います」


  
 慧日寺は1375年開基の古刹だが、 寺で食事会があったり、 文化祭の会場になったりと、 敷居は高くない。 時間も労力もかかるイベントにみんなが乗ったのは、 日頃からの付き合いがあってこそだろう。 今回の催しを思い出しながら時折涙ぐむ住職の姿に人柄がにじんでいた。 山南町太田。 55歳。

(J)

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