愛されるより信頼を
相生警察署長 浅野 準一 (あさの じゅんいち) さん (相生市在住)
(あさの・じゅんいち) 1944年 (昭和19年) 神戸市生まれ。 柏原高校卒。 検察事務官を経て1966年に兵庫県警入り。 和田山署次長、 監察官室長補佐、 交通機動隊長などを経て02年10月から現職。
署員93人を抱える相生署長を最後に、 40年近い警察人生にこの3月末で終止符を打つ。 「部署が14回変わり、 但馬から淡路まで県内くまなく勤務した。 特別大きな事件に会うこともなく、 とりたてて手柄を上げたわけでもなく、 ともかくここまでやって来た」 と、 淡々と話す。
父も警察官で、 氷上郡内の駐在所をあちこち回り、 浅野さんも物心ついたころから駐在所で暮らした。 当初は検察事務官になったものの、 結局は警察の仕事に。 『でもしか警官』 で、 これしかなかった」 と謙遜するが、 やはり父の背中を見て育ったことが影響しているのだろう。
管轄の相生市、 上郡町は県の西端の非都会の地域だが、 「最近は都市化が進み、 ひったくりや強盗事件などが増え、 治安は悪くなっている。 非行少年の年齢も低年齢化した。 警察も一生懸命にやっているが、 やはり限界がある。 向こう三軒両隣が手を携え、 『近所のおじさん』 が子どもたちを見守るという、 自治防犯の意識をもっと強めてもらうよう、 市民に啓発しているところ」 と強調する。
交通畑が長かったが、 「5年近く、 監察官室にいたのが大変勉強になった」。 県警の不祥事が相次ぎ、 対策で徹夜続きという経験もしたが、 「警察という存在を客観的に見ることができた」 という。
市民の権利意識が強くなるにつれて、 警察への批判も厳しくなる一方だ。 「大阪の本部長が言った 『警察は愛される必要はないが、 信頼されなければならない』 という言葉をずっと自らに言い聞かせてきた。 なんと言っても現場の執行力、 対応力を強めることが一番」 ときっぱり。
「10年間、 単身赴任が続き、 署長になってからは丹波の自宅にも2カ月に1回、 日帰りばかりだった。 退職するのは淋しいが、 ほっとするのも本音」 と漏らした。
(外野英吉)