心不全の治療法研究
内科専門医 上山 知己 (うえやま ともみ) さん (神戸市在住)
1965年 (昭和40年) 青垣町西芦田生まれ。 柏原高校、 鳥取大学医学部卒。 98年に神戸大学大学院医学研究科を修了し、医学博士号取得。 ハーバード大学研究員を経て2003年から神戸大学大学院医学系研究科循環呼吸器病態学講座に勤務。
内科専門医として、 心不全のおこる原因と治療法を研究している。 2003年に留学中のアメリカで発表した論文が高い評価を受けた。
「心不全は、 心筋梗塞などが原因となり生じる循環器疾患。 心筋梗塞では、 冠動脈が閉塞することによりその領域の心筋に酸素がいかなくなって壊死し、 範囲が広ければその結果心不全となります。 壊死した心筋は再生しないと言われているが、心筋を再生させる治療法があれば理想的で、 それにつながる研究がしたかった」 と研究の動機を語る。
「人を例にとると、受精卵という一つの細胞が色々な細胞に分化し、 臓器となり、 個体となります。 その分化した細胞の一つが心筋細胞ですから、 心筋細胞にする仕組みがあるはずで、 その仕組みを知りたいと思いました」 と話し、心筋細胞の分化に関わる遺伝子の一つを、 哺乳類の細胞を用いた実験により世界で最初に明らかにした。
「心筋細胞以外の細胞を心筋細胞に分化させることができれば、 治療方法が広がるでしょう。 しかし、 それにはまだまだ研究が必要」 と言い、 最先端の再生医療の研究に没頭している。
医者になろうと思ったのは、 高校生のとき。 「親戚に医者がいて、 話を聞いているうちに興味をもち、 人のためになると思いました」 と語る。 新しい研究も医者を志した時の思いに通じる。 今は、 研究のほか外来での診察、 研修医と一緒に病棟を回り、 指導もしている。
「医療はサービス業でもあると思います。 治療のレベルアップも課題です。 新しい情報を常に吸収するとともに、 手術や検査などの場合には、 患者さんや家族に対し納得のいく説明が必要です」
人の命と向き合う厳しい環境。 「田舎に帰るとリラックスします。 子どもと遊んでいる時が一番」 とまじめな医師から父親の顔に戻った。
(臼井 学)