余裕ある職場環境を
伊丹労働基準監督署長 酒井 通暢 (さかい みちのぶ) さん (伊丹市在住)
1952年 (昭和27年) 丹波市春日町下三井庄生まれ。 71年柏原高卒。 名古屋大理学部化学科卒。 三重労働基準局四日市労働基準監督署を振り出しに大阪府、 兵庫県内の監督署を経て現職。
篠山市、伊丹市、 三田市、 川西市、 猪名川町を管轄区域とする伊丹労働基準監督署長として、 労働環境の整備、 労働災害防止対策に取り組む。 アスベスト(石綿)の問題でも、 相談窓口を設置するなど対応している。
「石綿粉じんを吸引することにより、 肺がん、 中皮腫などの症状が30年後に現れる恐れがあります。 アスベストを含む建物を解体する時には、 飛散して付近住民に被害が出ないよう隔離して作業を進めるように指導しています」 と話す。
7月1日から 「石綿障害予防規則」 が施行されたのを受け、 建設業者らを対象にしたアスベストについての説明会を開いた。 「参加者のみなさんは熱心で、 マスコミ関係者も多数つめかけました。 アスベスト問題が表面化する前に、 計画していましたが、 偶然にもこの問題が出た直後の説明会になりました。 問題になった工場のある尼崎市に隣接しており、 反響が大きかったのかもしれません」 と話す。 健康被害については、 労災認定や無料健康診断の制度もあるという。 アメリカでは、 すでに1980年代に起こっていた問題。 「訴訟の国ですから健康被害については、 法廷の場で争われていたようです」。
リストラ、 サービス残業など、 労働環境は厳しくなる一方。 管内の労働災害も一時減り気味だったが、 昨年から増加傾向。 「人員の削減により、 一人あたりの労働の量が増えて、 余裕がなくなり、 ミスや労働災害につながっている」 と指摘。 「年輩者から若い人に、 ここは危ない、 という経験に基づいた 『安全文化』 というものを伝え、 災害防止の土壌構築が急務。 職場のコミュニケーションも大切ですね」 と力説。安全、健康でゆとりある職場作りの実現を呼びかける。
両親の住む丹波市の実家には休日にちょくちょく帰り、 英気を養う。 「高校時代にコーラス部で活動したことが一番の思い出」 と笑顔。
(臼井 学)