国学院大文学部教授 上山 和雄 (うえやま かずお) さん

2005.08.04
たんばのひと

記録を読む楽しさ
国学院大文学部教授 上山 和雄 (うえやま かずお) さん (千葉県柏市在住)
 
1946年 (昭和21年) 丹波市春日町生まれ。 柏原高、 信州大文理学部卒業。 東京大大学院国史学修士課程、 博士課程修了。 城西大学助教授を経て、 84年より現職。
 
 明治以降の日本の近代史・現代史が専門。 日常を生きた人々が残した記録や資料を読み込み、 それを再構成して時代や社会を浮き彫りにしていくことに興味をもつ。 歴史を一般化したり抽象化したりするより、 今起きている現実との関連を見つけることに関心がある。
 例えば今年出した著書 「北米における総合商社の活動」 (日本経済新聞社刊) は、 米国留学中に国立公文書館に通い、 戦前の三井物産の社内文書をひもといたもの。 「米国の大恐慌後、 1930年代にも日本たたきがあったことが記録に見て取れます。 それは80年代に日米経済摩擦があったときの状況とよく似ています」。
 「資料を読むのはとても楽しい。 特に人の真情が吐露された日記や記録などはね」。 中学生のころ、 ソロモン海戦で散った海軍兵士の伯父の遺書を読んだ時の鮮烈な思い出が影響しているのかも知れない。 空母から丹波の両親や兄姉に書き送ったもので、 巻物状に立派に表装されていた。 「家族への思いと天皇陛下のために死ぬという手紙でした。 それを読んで以来戦争や軍隊への関心を持ち続けています」。
 大学進学のころは、 国語か社会の教員になるつもりだったが、 研究者への道が開き、 興味と仕事が合致した幸せを感じている。 「大学紛争のころの信州大学では、 作家の猪瀬直樹たちとほぼ同時期で、 彼とは個人的にもいろんなかかわりあいがありました」 と笑う。 今の学生の大人しさがいささか残念そう。 「今年から就職部長につきましたが、 OBが経済界に少ないので苦労しています。 2年後に大学生全入時代が来ると、もっと深刻になりますね」と悩みをちょっぴり。
 最近 「石工丹波佐吉の生涯」 という古い本に出会った。 「石工の記録。 丹波は昔から良質の石が出たらしいですね」。 今は石工の歴史をたどるのがもっぱらの楽しみとか。

(上 高子)

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