経済のあり方を問う
朝日新聞社編集委員 安井 孝之 (やすい たかゆき) さん (千葉県野田市在住)
1957年 (昭和32年) 丹波市氷上町石生生まれ。 柏原高、 早稲田大理工学部卒業。 東工大大学院修士課程・化学環境工学専攻修了。 日経BP社から88年、 朝日新聞社に。 経済部次長を経て今年4月より現職。
今春、 朝日新聞経済部から安井さんが中心となり、 連載記事に手を加えて 「日米同盟経済」 という本を出した。 「当初、 題名を 『米国支配』 と考えていた」 というほど、 政治的関係が経済関係にも強く影響し、 米国が日本経済の活動を制約している実態が、 具体的事例で検証されている。
米国に追従するばかりの日本だが、 報復を恐れて 「ノー」 を言わなければ、 被支配から逃れられない。 「世界は2国間だけではない。 正当な異議申し立てなら、 他の国が応援してくれるでしょう。 そのためにも米国一辺倒ではない外交が必要」 と、 特にアジア諸国へ配慮する必要を説く。
経済担当の編集委員として、 日本人の生活、 企業のあり方など、 社会へ警鐘を鳴らす視点で紙面づくりに携わっている。 毎日夜中に帰宅。 「結婚以来、 平日は家で夕食を食べたことがない」 というほど多忙で、 一生活人、 父親としてジレンマを感じることもあるようだ。
最初からジャーナリスト志望ではなかった。 大学では韓国の光州事件に共感してアムネスティ活動にのめり込み、 「田舎出身の若者の殻を破ることに懸命だった」。 もう一歩、 また一歩と故郷から遠く離れようとして、 自分をいつも異郷に居る 「異分子」 と感じていた。 『消去法』 で選んだ経済誌 「日経ビジネス」 から、 朝日新聞の公募に応じ新聞記者に。
後ろを振り返ることがなかった安井さんだが、 いつの頃からか丹波を身近に意識するようになった。 3年前、 地方分権の行き届いたドイツの地方都市に半年住み、 そこで満足して一生を終える人たちを見ると、 「日本の地方もそういう風になればいい、 と思うようになった」。 最近は、 朝日の 「経済散歩」 に連載中の江上剛 (山南町出身の作家・小畠晴喜) さんらとも親交を深め、 「丹波のために何かできることはないだろうか」 と思っているという。
(上 高子)