MIHO MUSEUM学芸員 畑中 章良 (はたなか あきよし) さん

2005.08.07
たんばのひと

生の作品に触れ幸せ
MIHO MUSEUM学芸員 畑中 章良 (はたなか あきよし) さん (滋賀県栗東市在住)
 
1959 (昭和34) 年、 篠山市小枕生まれ。 篠山鳳鳴高、 同志社大法学部卒。 兵庫県土地開発公社を経て86年、 宗教法人神慈秀明会へ。 MIHO MUSEUM開設 (97年) 準備段階から現職。
 
 滋賀県信楽町の山中にあるMIHO MUSEUMは、 ルーブル美術館のガラスのピラミッドで知られるI・Mペイ氏の設計。 100ヘクタールの敷地と「桃源郷」をイメージした建物のみならず、 エジプトからシルクロード、 中国に及ぶ古代美術や漆工、 陶磁器、仏像、茶道具など質の高い所蔵品は、 内外から定評を得ている。
 8人の学芸員の1人である畑中さんは焼物、 茶道具が専門。 昨年企画した焼物、 書を中心とした 「尾形乾山」 展は、 20年前に東京で開かれて以来の規模。 ニューヨークのメトロポリタン美術館を初め海外からの協力も得て、 6万人と、 同館開設以来8年間で2番目の入場者数を記録した。 「苦労も多いですが、 年月をかけて案を練った展示の会場を回って、 お客さんの反応が良いのを感じた時が最高」。
 大学を出てしばらく、 県の公社で土地買収交渉などを担当していたが、 「これが本当にやりたい仕事か」 と疑問を感じた。 転職先の宗教団体で、 ちょうどミュージアムの計画が持ち上がり、 学芸員の資格をめざして大学の通信教育を受けた。 「もともと好きだった美術に関わる仕事に就くことが出来てラッキーでした。 生の作品に触れ、 発するものをじかに受け止めながら勉強できるのは、 本当に幸せです」。
 同館の展示の方針は、 「作品の持つ力を最大限に引き出す」 ことで、 照明などにひときわ工夫を凝らしている。
 現在開催中の 「芹沢介」 展 (8月21日まで)、 9月からの 「中国 美の十字路 大唐文明への道」 に続き、 来春には畑中さんが担当する、 ニューヨークの 「バーク・コレクション」 が計画されており、 今はその準備に余念がない。 その合間にも、 地元にある龍谷大学で工芸品の講義をしてきた。
 両親のいる篠山へは 「お盆と正月に帰る程度」 だが、 同級生らを訪ね回る。 「まあ、 遠きにありて思うものでしょうか」。

(外野英吉)

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