柏原病院パンク寸前

2006.03.19
丹波の地域医療特集

医師不足、1年で9人減
「救急、まず開業医へ」丹波市医師会と合同でPR

 丹波地域の中核病院・県立柏原病院 (繪野幸二院長) が、 研修医制度の改正などの影響で、 深刻な医師不足に陥り、 パンク寸前の危機を迎えている。 今年度四十一人でスタートしたのが、 現時点で三十六人。 四月以降は三十二人 (内科三人、 小児科一人の減員) となる見通しで、 医師の負担が大きい救急診療をこれまで通り行うのが困難になることから、 同病院と丹波市医師会は、 入院の必要がない救急患者について、 まず医院・診療所で受診するよう呼びかける異例の 「お願い」 文書を近く配布する。 市も、 各医院の午後診察、 夜間診察の時間などを記載した診療施設マップを作成して配布し、 「まずかかりつけ医で受診」 を啓発する。 (足立智和)
 同病院の医師は、 神戸大と兵庫医大からの派遣で確保していた。 しかし、 一昨年始まった新臨床研修医制度により、 大学にとどまる医師が激減、 大学自体が医師不足になり、 地方に派遣していた医師を引きあげるようになった。 同病院では、 今年度すでに五人が引きあげており、 さらに三月末で三人が引きあげる。 一人は開業医の元で勤務する。
 同病院と県病院局によると、 両大学に後任の確保を求めるほか、 別の医大に派遣を要請するなど、 医師確保に務めているが、 全県、 全国的な医師不足で、 成果が上がっておらず、 今までどおりの救急診療ができなくなると判断した。
 同病院は、 二次救急 (入院を必要とする重症) への対応や入院患者への備えとして、 当直医二人と、 内科、 外科、 整形外科、 脳外科、 小児科の各科の医師を毎晩拘束している。 専門医がいる安心感と 「いつでもみてもらえる」 便利さから、 午前十一時の診察受け付けが終わってからも多くの人が 「救急患者」 として来院している。
 しかし、 窓口に訪れた救急患者 (出産は除く) のうち、 入院を必要としたのは約五%=表1。 ほとんどが軽症で、 本来同病院が果たすべき役割と違う部分に多大な労力を費やしている実態がある。 軽症の救急患者の診察を担ってもらうよう医師会と話し合い、 合意を得て市民に周知をはかることにした。
 同病院の診察時間外の救急外来のうち、 七割程度が午後十時までに訪れている=表2=ことから、 医師会の会員がこの時間帯までをカバーするようつとめる。 中澤会長は、 「医師会の会員が、 夕方から夜間十時ごろまでの時間外診療をなるべく行うことで、 柏原病院の負担を減らしたい」 と話す。
 同病院の上田康夫手術・救急担当部長は、 「医師不足は当分続く。 このままでは、 少ないスタッフで、 この地域の他の医療機関ではできない高度な医療を提供するという柏原病院の役割が果たせなくなる。 まずかかりつけ医に受診し、 その次に病院という意識を持ってほしい」 と話している。
 昨年四月から今年一月末までの間に同病院の救急外来に訪れた患者は、 八千七百八十四人。 トップは内科の二千三百九十五人、 次が小児科の二千二百六十五人。 うち入院を必要としたのは、 小児科は百八十四人で一割弱、 内科は五百二十一人で二割強だった=表3。

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