きょう23日は、ウナギを食する「土用の丑の日」。大のウナギ好きだった歌人の斉藤茂吉にこんなエピソードがある。▼会合でウナギが出たときのこと。隣の人のウナギが大きく見えた茂吉は、自分のウナギと交換してもらった。ところが、今度は、もともと自分のものだったウナギの方が大きく見えてきた。それで再び交換してもらった。▼「隣の芝生」さながらの話だが、これまでのまちづくりにも同様の心根が働いてきた。「隣の町に公民館が建てば、もっと大きな公民館を建てるのが町長の仕事だった」と、元三重県知事の北川正恭さんが話していた。こんな地方行政が地方や国に莫大な借金をもたらした。▼隣の町をうらやみ、さらに上を行く施設を補助金でつくる。隣の町も負けてなるものかと、さらに新しい施設を補助金でつくる。こんなウナギ上りのようなまちづくりは、自分の財布でまちをつくる分権自治の時代にそぐわない。北川さんは「ないものねだりではなく、自分の地域にあるものを探さなければいけない」と強調していた。▼「自分のポケットの中の小銭は、他人のポケットの大金にまさる」という言葉がある。地域の資源が小銭のように貧相であっても、かけがえのない財産だ。要は、小銭を元にいかに大金を産み出すか。知恵が問われる。(Y)