1961年、柏原高校野球部は春の選抜高校野球に出場し、甲子園の土を踏んだ。1回戦で、のちにプロ野球の監督になった八木沢投手を擁する作新学院と対戦し、0-2で惜敗したが、夢の甲子園出場に地元はわきたった。▼柏高野球部の黄金時代の立役者、恒川十三雄さんからこんな話を聞いた。新キャプテンになったばかりのころの、ほろ苦い思い出だ。練習中、監督から「だらだらするな」としかられ、怒った監督はグラウンドを出て行った。残された恒川キャプテンと部員達。恒川さんは部員を集め、「グラウンドを走ろう」と呼びかけた。▼夕暮れに包まれたグラウンドを何周も走った。黙々と走り続けた。部員達は次第にへとへとになり、「もういいだろう」と内心では思っていたそうだが、恒川さんは足を止めなかった。「監督の怒りにキャプテンとしてどう対処すればいいのかわからず、行動で示さなければと思ったんでしょう」と振り返っていた。▼この話を聞き、若さの特質を思った。まず、走り続けられる体力がある。叱責に応える素直さがある。叱責が重圧になるのは、若いゆえの未熟さであり、純粋さでもある。そして、夕暮れの中でのひたむきな汗。▼高校野球は、自分にも同じような若い時代があったことを思い起こさせてくれる。きょう9日から県大会が始まる。(Y)