有望な省エネ材PR
(たに・けいぞう)東京都在住
一九五一年 (昭和二十六年) 丹波市柏原町生まれ。 柏原高、 東北大経済学部卒業。 神戸製鋼入社。 主に鉄鉱石関連部門で勤務の後、 〇三年より日本伸銅協会へ。
全国で銅線が盗まれる事件が頻発している。 この問題で昨秋、 NHKの取材を受けテレビ画面に数秒間、 背景などについて話しているのが映ったら、 反響が大きいのに驚いた。 柏原高校の先輩が赴任先のタイで見た、 など三十人ほどから電話やメールが来たという。
公園の地下に張りめぐらしたケーブルが数キロに渡ってごっそり被害に遭うなど“銅線泥棒”頻発の背景はこうだ。 二年後の北京オリンピックや四年後の上海万博を控え、 中国の建設ラッシュが銅地金の需要を押し上げ、 日本国内でも〇六年の前半で二倍にも値上がりした。
伸銅協会は銅を加工する企業の集まり。 銅高騰の業界への影響はと言えば、 「原料購入、 販売の両面で不利」 なのだそうだ。 「銅は熱伝導性が大きく、 鉄やアルミに代わり得る有望な省エネの材料なんですが、 昔から 『緑青 (ろくしょう) に毒がある』 という誤解があって、 なかなか思うようには売れません。 この機会に利点をもっとPRして普及に努めるのが、 協会の大きな役割と思っています」。
協会事務局にはメンバーの神戸製鋼から出向した (〇六年春に転籍)。 神戸製鋼時代の八五年から三年半、 〇六年のアジア大会で注目を浴びた中東のカタールに赴任。 「夏の半年間は日中摂氏五十度にまで上がり、 雨は一年に一、 二回という過酷な砂漠地帯です。 休暇には緑を求めてヨーロッパで過ごすのですが、 機上から緑を見たときの感激は忘れられません」。
年一回、 関東一円に住む柏原高校の同学年が集まる。 最近の話題は親の介護や定年後の丹波へのUターン。 「僕はUターンはしませんが、 丹波はいつまでも心の支えです」。 故郷を出る時、 祖父が 「苦しいことがあったら、 八幡さんに向かって祈れ」 と言ったことをよく思い出す。 書店の実家に帰るといつも、 八幡神社や母校の周辺を時間をかけて散歩する。 (上 高子)