丹波佐吉

2007.02.12
丹波春秋

 柏原八幡神社の境内に、柏原の生んだ名工が残した二つの狛犬がある。本殿前の狛犬は、時の天皇から「日本一の石工」と賞賛されたといわれる丹波佐吉の作。厄除神社の前にある狛犬は、兵庫県文化賞を受けた初代磯尾柏里の作だ。▼和田山町の生まれで幼くして両親を失った佐吉は、柏原町の石工、難波金兵衛に引き取られた。のちに柏原を離れた佐吉だが、子ども時代に読み書きを教わった庄屋の上山孝之進から依頼を受け、文久元年(一八六一)に八幡神社の狛犬を作った。▼初代柏里が狛犬を作ったのは、それから約九十年後。二人の名工の狛犬が時を経て八幡神社境内に並んだわけだが、柏里は、佐吉と浅からぬ糸で結ばれている。▼柏里は十二歳で大工の修業に出た。その弟子入り先は上山家の近くにあり、親方に連れられての初仕事が上山家だった。そこで柏里は、佐吉の最後の作品といわれている不動明王像や、石狐を見た。そのときの印象を柏里は晩年になって、「子ども心に、ぐあいよう彫ってなさるなと思いました」と語っている。▼佐吉にとって上山孝之進は、「心の中の親」という存在だった。その上山家に残る佐吉の作品に感動した少年がやがて、丹波を代表する彫物師になった。厄除け大祭で八幡神社を参拝した折には、二人の狛犬にも目を向けてほしい。(Y)

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