「夕立に取り込んでやる隣の子」という江戸川柳がある。

2007.02.03
丹波春秋

「夕立に取り込んでやる隣の子」という江戸川柳がある。場所は、裏長屋。おかみさんたちが井戸端会議を楽しんでいる。そこへ夕立。おかみさんたちは洗濯物を取り込むために走る。その一人が、長屋のはずれで遊んでいる隣の子を見つけ、洗濯物より前に子どもを家に取り込む。そんな風景を詠んだ川柳だ。▼質素ながら、持ちつ持たれつだった裏長屋の暮らしには濃密な人間関係があったよう。しかし今は薄らいだ。道端で子どもに声をかけると、不審者と疑われかねない時代。子どもをねらった犯罪の報道に接するたび、日本の「安全神話」の崩壊を憂える。▼警察の検挙率が落ち込んでいるという。その理由の一つが、コミュニティの弱体化だ。隣に住む人さえ誰だかわからないという今、警察が事件の聞き込みをしても、得られる情報が昔と比べて少なくなったと聞いた。先の川柳のような社会なら、そんなことはなかろう。▼丹波市社会福祉協議会の調査によると、「困ったときに家族以外で近所に頼れる人がいるか」の問いに9割近くが「いる」と答え、多くが「隣近所の人がすぐに来てくれる」と考えていた。▼この回答を見るかぎり、この地域のコミュニティはまだまだ健全だと安心したが、「頼れる人がいない」とした人が7%あった。どんな人で、どんな地域か気になる。(Y)

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