浄土宗兵庫教区丹波組の檀信徒組織「ダーナの会」が主催した「釈迦内柩唄」(水上勉作)という劇を丹波の森公苑ホールに観に行った。全国を巡回している「希望舞台」という劇団も、主演の高橋有紀という女優も全く知らなかったが、感動した。▼秋田県の寒村で死体焼き場の実家を引き継ぐことになった末娘、ふじ子を主人公に、戦前から戦後に渡る物語で、大半はふじ子のモノローグ(ひとり言)による一人芝居だが、途中の回想場面で父母や姉らが登場する。▼職業ゆえに差別され蔑まれてきたが、温かさと明るさを忘れずに生きる家族。その家に雪の夜、近くの花岡鉱山から朝鮮人青年が逃げて来て、つかの間かくまわれるが、憲兵に見つかり結局射殺されてしまう。その死体を焼けとの命令に、「役所から許可書が来ていない」と抵抗する父。▼人を焼いた灰で育ったコスモスの「どの花も顔が違う」という父が残した言葉で終わるストーリーは単純で、比較的短かったが、何故か涙腺が緩み、満席のそこかしこでハンカチを出す人が目立った。何故感動したのかと考えるに、主演の女優が子供時代も含め、全身を込めひたむきに演じていた気持ちが伝わったのだろう。▼演劇シーズンたけなわ。我が職場にも何人かアマチュア劇団員がいるが、「観る者に感動を与える演技を」と頼んでいる。(E)