盲亀浮木

2007.04.16
丹波春秋

 旧暦4月8日は、お釈迦様の誕生日。生まれたときに7歩あゆみ、「天上天下唯我独尊」と言ったという伝説は有名だ。この言葉は、人間だれしもがかけがえのない存在であることを教えているが、釈迦はさらに「盲亀浮木(もうきふぼく)の譬え」で、人として生まれることがどれほど有り難いかも教えている。▼果てしなく広がる海の底に、目の見えない亀がいる。その亀が100年に1度、海面に顔を出す。広い海には、真ん中に小さな穴が開いた1本の丸太が浮かび、風に吹かれて西に東へ、南に北へ漂っている。その丸太の穴に、亀が海面に浮かび上がった拍子に頭を入れる。▼その可能性はゼロに等しいだろうが、釈迦はこう言う。「私たちが人間に生まれることは、この亀が、丸太の穴に首を入れることが有るよりも難しい」。人として生まれることがいかに有り難く、喜ばねばならないかがわかる教えだ。▼釈迦の生誕からおよそ2500年の現代。「丹波地域の人」として生まれることが有り難い状況に陥っている。病院の産科、小児科の危機で、安心して子どもを産み、育てられる環境でなくなろうとしている。これに伴って若い人たちが流出すれば、丹波に生まれる人がさらに減ることが懸念される。▼この丹波が「盲亀浮木」の地になるようでは、丹波の前途は暗い。(Y)

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