丹波新聞社が6月16日に丹波の森公苑大ホールで開く地域医療フォーラム 「病院は生き残れるか」 で講演する講師2人を、 2回に分けて紹介する。 1回目は城西大学経営学部准教授の伊関友伸(いせき・ともとし)氏。
―病院問題を研究するようになったきっかけは。
「前職は、 埼玉県職員。 県立病院課で、 埼玉県立4病院の経営改革に取り組んだ。 元々行政学、 特に行政評価が専門で、 自治体のマネジメント研究の一つとして、 病院問題の研究を始めた。 全国で問題が深刻化したため、 今は自治体病院問題を中心に研究している」
―夕張市立総合病院・経営アドバイザーを務めたが。
「総務省と北海道庁に頼まれた。 夕張市自体に600億円もの借金があり、 そこに病院問題もからんでいた。 行政と病院両方の問題を分析できる研究者が他にいないので、 声がかかったのだろう」
―171床の 「総合病院」 を、 19床の 「市立夕張診療所 (夕張医療センター)」 にした。
「採算が合わない夕張で医療を残すには、 公設民営化でないと無理だと思った。 財政再建団体の夕張市からは1円の補助もなく、 選択肢はなかった。 医師数や経営などの現実を追求すると、 診療所化せざるを得なかった」
―同センターの指定管理者は、 地域医療界で有名な村上智彦医師が理事長を務める医療法人だ。
「情熱を持ち、 腰をすえて長期的にやってくれる人物と見込み、 村上氏に夕張に来てもらえないかとお願いした。 『村上医師と一緒に仕事がしたい』 と、 いい医師、 スタッフが集まり始めている。 お金の面では大変な苦労をしているが、 医師招へいには苦労しなくなった。 スタッフには、 総合病院を解雇され、 新しい条件で再雇用された人もいる。 これらの人も公務員時代とは意識が変わってきているようだ。 患者にも意識改革を求めている」
―夕張市立総合病院の病巣は何だったか。
「『お役所仕事』 だ。 医師が減っているのに、 医師の仕事の厳しさや待遇の悪さを変えられなかった。 役人は、 目の前の医師不足より、 役所内の調整に目がいく。 つまり、 条例を変えるには、 首長、人事担当、財政担当、 そして議会の了解が必要になる。 これら面倒くさいこと、 大変なことをやらない。 40億円近い借金があり、 職員給与を抜本的に変えなければいけなかったのに、 しなかった。住民にも問題があった。 軽症で診療時間外に受診に訪れ、 コンビニのように使い、 医師のやる気を失わせる一因になった」
―全国の医療崩壊の事例を研究し感じることは。
「崩壊しているのは、 ほとんどが自治体病院だ。 崩壊の予兆が見えた時、 民間なら素早く手当てをするが、 役所は先送りする。大崩壊するまで、変わらない。 国が診療報酬を絞っており、 民間ですら経営は難しい。 動きが遅く、 非効率な体質の自治体に病院経営は無理なんじゃないかと考えている」(足立智和)