県立柏原 (柏原)、 柏原赤十字 (日赤) 両病院の、 「立ち枯れ」 が進行している。 両病院は、 医師の減少による患者減で収益悪化が著しい。 医師減に歯止めをかけ、 比較的安定した経営を続けている兵庫医大篠山病院も、 老朽化した病棟の建て替え額の支援などを巡る篠山市との存続交渉が進んでおらず、 3病院とも、 生き残れるかどうかの瀬戸際に立たされている。 16日に本社主催で開く 「地域医療フォーラム」 を前に、 昨年から現在に至る3病院の動きをまとめた。 (足立智和)
医師は、 平均1人で1億の収益を上げる。 柏原に端的にみられるように、 医師減は、 赤字の増加と正比例する=表参照。 柏原と日赤の悪化に対し、 篠山が悪化を食い止めていることからも明らかだ。
柏原、 日赤両病院の勤務医不足は、 ▽開業▽派遣元大学医局による医師引きあげ (柏原は神戸、 日赤は兵庫医大、 大阪大、 大阪医大) ▽待遇の悪さ―などが要因。
医師不足が最も顕著な日赤では、 昨年4月から先月末までに、外科(2人)、産科(3人)、 整形外科 (3人)、小児科 (1人) の常勤医9人が去った。 今月末で眼科医(1人)も去る。 残る常勤医は3人 (内科医2人、 歯科口腔科1人)。医師が減り、 2次救急輪番、 小児救急輪番の当番病院から外れた。
昨年度で2億5500万円の赤字を計上。 4月から55床に縮小し、 人件費などを圧縮。 収入を増やすため、 5月から同病院で市医師会が平日夜間の応急診療を行い、 経営を支援している。 地元のニーズがなければ、 「撤退止む無し」 という所まで追い詰められている。
丹波市地域医療協議会が今月末にまとめる支援策を、 存続、 撤退の判断材料の1つにするが、 「残ってほしいが、 医師が呼べる担保がなければ、 大きな投資は難しい」 (辻重五郎市長) としており、 満足な支援を得ることは難しそうだ。
県立柏原は、 昨年4月に34人いた常勤医が、 現在は27人。 心筋こうそくや胸痛などを診る循環器内科が休診、 手術を支える麻酔科医も退職し、 中核病院機能が揺らいでいる。 4月の院長人事で小児科実働医が1人になり、 存続危機に。 産科も、 小児科がなくなれば撤退する流れにある。
患者が多い内科や小児科の診療制限、 循環器内科、 皮膚科休診などの影響で、 昨年度は入院、 外来とも約25%患者が減少。 昨年度の赤字は11億8000万円と、 前年度の6億8800万円から倍増。 60%になれば、 経営危機と言われる、 診療で得る収入に占める人件費の割合は98%に達す。
都道府県立病院で下から5番目という医師給与や全国平均より高い職員給与の見直しを行おうにも県条例の縛りがあり、 経営改善が進まない。
柏原、 日赤が患者を大きく減らす中、 篠山病院のみが患者 (入院) を増やしている。 現在常勤医は21人。 昨年4月と今年4月とを比べても、 2人の減にとどまっている。 4月に医師4人が異動したが、 後任医師2人の招へいに成功。 丹波地域で唯一麻酔科の常勤医 (2人) を擁すなど、 医師養成機関である兵庫医大と直結している強みを発揮し、 医師減少を食い止めている。
収益も、 昨年度の赤字額は 「数千万円程度」 (岩忠昭院長) と、 一昨年度の約1億5000万円から改善。 病床の稼働率を上げ、 経費を減らした。
今年9月末で国から経営移譲10年を迎え、 10年は篠山から離れないとする法的拘束力が切れる。 市との存続協議は、 市長の交代で仕切り直しになった。 前市長との交渉で、 病院側が市に求めた支援は▽築38年の病棟の改築費用に21億円▽救急継続のための補助を年間1億8000万円▽産科、 小児科を存続させる場合はプラス1億円―。
酒井隆明新市長が示した市の財政見通しには、 年間1億5000万円の補助と、 病棟建て替えに5億円が盛り込まれた。 しかし、 市長自身 「これでは足りないだろう」 と述べており、 歩み寄れるか、 交渉の行方が注目される。[img align=left]https://tanba.jp/uploads/photos2/294.gif[/img]