立ち枯れる病院(中) 内科・小児科医狭まる診療

2007.06.07
丹波の地域医療特集

 県立柏原 (以下、 柏原)、 柏原赤十字 (以下、 日赤) の立ち枯れが地域医療にもたらす影響が、 救急、 心疾患を中心とする内科、 小児科、 産科などに顕著に表れている。
 丹波市81・3%、 篠山市76・8%―。 昨年の両市消防本部が搬送した救急患者の管内収容率 (市内病院でどの程度収容できたか) だ。 篠山市は微減、 2年前まで90%を超えていた丹波市は、 昨年1年で8・6%悪化した。
 市内救急の約6割を受けていた柏原の内科医が減り、 4割の受け入れにとどまったことが響いた。 医師退職で、 9月から心筋こうそくや急性心不全の治療ができなくなり、 柏原で診られる患者の幅が狭まり、 地域の医療レベルが一段低下した。 生命の危機に直結する心筋こうそくや心不全といった患者でも、 その多くを三田市民 (三田市)、 大山 (西脇市)、 福知山市民 (福知山市) などへ搬送せざるを得ない状況が続いている。 心疾患以外で入院が必要な患者も、 夜間の救急患者は水曜以外は基本的に受け入れられず、 大塚病院 (氷上町絹山) で診られない場合は、 市外搬送される。 昨年度の内科患者は、 入院、 外来 (救急含む) 合わせ、 3万5380人と、 前年度の7万268人から半減した。
 篠山市は、 医療資源が乏しく、 以前から市内収容率は7割程度だった。 兵庫医大篠山病院の医師数は横ばいで、 安定的に市内搬送の4割を受け入れている。 市外搬送では、 三田市民への搬送が増え、 昨年初めて、 柏原と三田市民の搬送数が逆転した。 篠山市消防本部の堂本文三救急第一係長は、 「病院数に増減はないが、 中身が違ってきている」 と、 丹波地域の病院の体力低下を実感している。 日赤は、 昨年は病院群輪番制の当番病院として一定の役割を果たしたが、 医師不足のため、 先月で輪番を脱退。 今年はいっそうの丹波市外への搬送増加が、 確実視される。
 心疾患では昨年、 丹波市消防本部が市外病院へ搬送中に心停止し、 同乗していた医師が救急車の中で心臓マッサージなどを施して命を救ったケースがあった。 3月には、 86歳の男性の搬送先が見つからず、 「現場待機」 を33分強いられた。 土日や夜間は、 当直医の専門科目と患者の症状がマッチしないことが多く、 市外も含め、 4病院、 5病院に打診し、 なんとか受け入れ先を見つけている。
 開業医にも、 影響が出ている。 小児科と、 心疾患を診る循環器科を標榜する和久医院 (氷上町成松、 和久晋三院長) は、 来院患者数が1日平均20人程度増えた。 循環器系疾患では、 合併症があるなど、 病院にかかった方が好ましいハイリスクな患者が増えた。 丹波市医師会の休日診療所の患者数も、 昨年度は前年度より5割増えた。
 日赤産科の分娩中止で、 柏原のお産が増加。 月間の分娩予約件数をおおむね35件に制限している。 今のところ、 制限寸前まで行くものの、 断ったケースは出ていない。 しかし、 丹波地域の妊婦の利用も多い、 うつのみや産婦人科医院 (西脇市、 宇都宮卓院長) が、 希望者の増加で9月以降分娩制限をする予定をしており、 あふれた妊婦が柏原に今以上に集まる可能性がある。
 小児科は、 4月から篠山が1人になり、 日赤が0、 柏原も実質1人と、 実質的に3人減った。 柏原は外来予約制とし、 開業医らから送られてくる比較的症状が重い患者のみに特化している。 小児救急輪番制も、 これまで平日週4日、 丹波地域内で対応できていたが、 今月から水曜 (篠山) と金曜 (柏原) の2日に減った。 頼りにしていた、 市立西脇 (西脇市)、 三田市民の常勤医もそれぞれ1人ずつになる見込みで、 診療縮小が懸念されている。
 山鳥嘉彦・篠山市医師会長は、 「重症患者を送れる病院がない。 小児科が専門でない開業医が診ようと思っても、 近くに送り先がないので、 二の足を踏んでいる傾向があるのでは。 県が、 丹波圏域の中で、 柏原に集約するという案を示したことで、 他病院の小児科医が減った。 柏原自体も、 増えなかった。 丹波圏域内で対応できるようにしたいが、 現時点では、 いざとなったら、 神戸や京都府下の病院に送ることを考えないと、 どうにもならないのかもしれない」 と話している。(足立智和)[img align=left]https://tanba.jp/uploads/photos2/295.gif[/img]

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