恐竜がイナバウアー

2007.07.02
丹波春秋

 恐竜がイナバウアーをしていたとは驚いた。スケート選手の荒川静香さんがぐっと背中をそらすイナバウアーは優美そのものだが、この恐竜は大きさが20メートルを超えるという。そんな巨漢のイナバウアーは何とも圧巻だ。でも、そのおかげで頭骨の化石が発見された。▼ティタノサウルス類とみられるこの草食恐竜が1日に食べる量は、牛の150頭から200頭分の食事量に相当するという。恐竜が生きていた時代にはそれだけの植物が繁茂していたのだ。いかに鬱蒼としていたか、想像もつかない。▼恐竜の発見現場からは肉食恐竜の歯の化石も見つかっている。恐竜の死骸を食べているときに抜けた歯だそうだ。鬱蒼とした地をさまざまな恐竜が闊歩する。そんな光景が私たちの住むこの丹波で繰り広げられていた。▼スケールの大きさから、私たちの目はどうしても恐竜に吸い寄せられるが、化石発見者の一人、足立洌さんは「脇役もいっぱいいたことを忘れないでほしい」と言う。センチ単位、ミリ単位の生き物も巨体の恐竜と同居し、命を育んでいた。▼小さな生き物もうごめいていたという微視的な視点をあわせ持つと、恐竜が生きていた世界がよりダイナミックに思えてくる。全身骨格発見を期待すると同時に、1億3000万年前の丹波の姿を丸ごと知りたくなった。 (Y)

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