西宮市から丹波市に移り住んだ、『田舎は最高』の著者、平野隆彰さんは「田舎はこの世の極楽だ」という。極楽たるゆえんの一つは、真夏でもエアコンなしで寝られることだ。西宮のマンションでは、エアコンをつけずにいられないが、丹波では扇風機すら不要。しかも小鳥の声でめざめ、そう快な気分で朝を迎えられる。▼我が家でも、エアコンを動かすのは、日中を含めてひと夏に1回あるかどうかだが、熱中症に倒れる人も見られたこの盆休み、たまらずにエアコンをつけた。涼風が心地よかったが、こうした快適さを得る一方で失うものもあることを思わずにいられなかった。▼本紙5面掲載の講演録で、東京大学大学院の鷲谷いづみ教授が「ここ50年に人類は、食料などの需要を満たすため急速に広範に生態系を変化させた。それは、リスクの増大といった多大なコストのもとに得られたもので、そのコストは増大し続けている」と警告している。▼環境破壊が社会問題化している今、こうしたコストを理解していない人はいなかろう。しかし、理解がそのまま、環境破壊抑止の行動につながっているだろうか。せめて快適さを貪欲に欲することだけでも慎みたい。▼温暖化が進み、田舎でもエアコンなしでは寝られない時代がいつか来るのか。そう思うと、酷暑なのに背筋は寒い。(Y)