眠れる差別意識

2007.09.03
丹波春秋

 高校生の仲良し4人組。そのなかに同和地区出身者が1人いた。そのことが分かっていても、現代っ子には何も問題がない。親がとがめても、「なんでそんなことを今の時代に言うのか」と、いさめるくらいだった。▼ところが、ふとしたことから仲間割れを起こした。仲間外れにされた生徒が、腹いせに「あんた、私を仲間外れにして気持ちいいかもしれないけど、あんたは同和地区出身者ではないか」と言い放った―。以上は、過日に亡くなった県人権教育研究協議会長の堀井隆水氏が、『ひょうごの人権教育』132号で書いていた話だ。▼関係がうまくいっているときは、問題はなかった。ところが、関係にひびが入ると、眠れる差別意識が顕在化した。私達にも、このような「眠れる差別意識」が心の奥底に潜んでいないかを問い直す事例だ。差別は今なおある。▼被差別階層に生まれ、差別と闘いながら、教育者として見事な生涯を貫いた旧制柏原中校長の大江磯吉。出身地の長野県飯田市では、地元劇団が大江を題材にした演劇を上演している。幕がおりる前に、出演者全員が客席に向かって問いかける。「磯吉の夢は果たされたか」と。▼大江は105年前の9月5日に亡くなった。命日を前に、「夢は果たされたか」の問いに「はい」と答えられる自分であるかを見つめたい。 (Y)

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